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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年5月6日付け

 富山県の焼肉チェーン店で肉の刺身「ユッケ」を食べた客ら4人が食中毒で死亡し、30人が入院しているという。96年に貝割れ大根が原因として大きな風評被害をもたらしたことで知られた大腸菌O157が検出されており、大きなニュースになっている▼長く肉食がなかった日本では生肉を食べる習慣は寄生虫がいないという馬刺しなどを除いて一般的でなく、もちろん韓国から入ってきた食文化。19世紀末の料理本『是議全書』には調理法があるという。サンパウロ市ボン・レチーロ区の韓国料理店でも食べられる。梨と一緒に食べるのが普通で、日本では考えられないような量がでてくる。最後はユッケ丼で楽しめるほど▼生肉といえば、エスキモー。ビタミンも多く壊血症になるのを防ぐのだとか。冒険家、植村直己氏をして一番美味とするのは、アザラシの睾丸だとか。著書にある解体中に寄生虫を食べる場面には怖気をふるったが、栄養学的にはいいのだろう。何かのエッセイで「肉は焼くより生が美味い」とも書いていた▼ブラジル人は一般的に肉を食べるとき、よく焼いたのが好みのような気がする。もちろんタルタルステーキもあるし、アラブ系軽食屋で「キビ・クルー」も人気だから、肉を選ぶということだろうか。シュラスカリアなどの広告を見ると赤々と血が滴るような写真が使われる。これには精力旺盛のイメージもあるようだ▼日本のユッケの味は独特だ。日本人好みのサシの入ったものにタレと卵の黄身をあえて食べる。あの美味さは堪えられない。食の楽しみと引き換えに命を失った被害者の無念を思い、原因究明を待ちたい。(剛)