ニッケイ新聞 2011年5月11日付け
政府の公式インフレ指数IPCAが中銀の目標上限である6・50%を超えたと発表された直後の9日、2010年の場合、収入以上に支出した家庭が53%に上り、低所得世帯ほどその差が大きいという2010年の統計調査の結果が発表されたと9日付G1サイトや10日付エスタード紙がほうじた。
サンパウロ州スーパー・マーケット協会(Apas)の依頼でカンタール・ワールドパネルが全国8200世帯を対象に行った調査によると、食料購入などにあてた支出平均は月2171レアル。月収平均の2146レアルを約1%上回り、支出が収入を上回った家庭は全体の53%に上った。
収入規模毎に解析すると、最低賃金の1〜3倍のD/Eクラスでは支出が収入を6%上回るが、3〜10倍のCクラスの赤字は2%程度。11倍以上のA/Bクラスでは約2%の黒字だった。
一方、D/Eクラスの消費は前年比16%伸びて、A/Bクラスの13%を凌駕。全国平均は13・9%だから、スーパーなどがCクラスからD/Eクラス向けの品揃えを心がけた事が功を奏したともいえる。
Apasでは、半数以上の世帯が赤字でも、この位なら消費者自身が調整できる範囲で、債務不履行が急増する事はないと見ているが、生活を維持するための必需品購入が中心のD/Eクラスにとってのインフレは、A/BクラスやCクラス以上に重いとの報道は8日付フォーリャ紙。
肉が高いから菜食主義になったというアンジェリカ・サントスさんはD/Eクラスの弁当持参組で、交通費や家賃の値上がりが響くと漏らす。
その一方、外食費とガソリン代が上がったというのはA/Bクラスのクラウジア・ボカウルトさん。スーパーでは安い品を探すが、基本食材の米やフェイジョンは、安くて質の悪い物を沢山食べるより少々高くても良い物を必要量食べる方が良いというエウヴィーラ・ロエティグさんはCクラスだ。
同紙によると、消費の中心であるCクラスのインフレは6・11%。全体の6・51%より影響が少ないが、消費を下支えするC〜Eクラスが赤字傾向に陥った事で消費熱が冷める事を期待する声も出ている。
その意味では、前年比9・9%程度の伸びと見られていた2〜8日の〃母の日商戦〃の売上が、12・4%の伸びという数字は、融資引き締めや金利引上げでインフレ対策は万全と見た経済閣僚の期待を裏切った。
サンパウロ州商業協会でも、事前予想の7%を上回る8・7%の売上増を記録。携帯電話の30%や小型家電の40%増など、商品や店によっては20%前後の売上増の報告もあり、一度緩んだ財布の紐の締直しや赤字改善には時間がかかる可能性もある。