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参加者激減の事実はない=第5回ウチナーンチュ大会=琉球新報の誤報に怒りの声=困惑する県人会関係者ら

ニッケイ新聞 2011年5月14日付け

 「参加者はむしろ増えている。何故こんな間違った記事が…」。今年10月、沖縄県で開催される『第5回世界のウチナーンチュ大会』に参加する在伯県人が激減している、との琉球新報(今月10日付けサイト)の報道を受け、ブラジル沖縄県人会関係者は困惑の表情を見せている。実際の参加予定者数は、前回大会(06年)の436人を大きく超える780人。ツアーを担当する旅行代理店からは、「メディア主導による風評被害」と怒りの声も上がっている。与那嶺真次会長は、「先祖を大事にする我々にとって沖縄の地に帰るのは特別なこと。ウチナーンチュ大会への参加を通して復興の応援をしたいと思っている」と話している。

 記事では、「2月に766人いた申込者は、原発事故による放射性物質流出への不安を理由に辞退者が相次ぎ、約450人にまで減り、さらに減る可能性があるという」とした上で、「インターネットで情報を得ている3世4世を中心にキャンセルが増えている」と続ける。
 琉球新報と記事提携をしている全国紙、毎日新聞サイト(同日付)にも同記事が掲載されている。
 「参加者はむしろ増えているのに…」と首をかしげる与那嶺会長によれば、「大会は5年ぶりに世界中の県人が一堂に会する大きな祭典。何年も前から楽しみにしている人も多い」という。
 今年4月には同大会実行委員で、ブラジル沖縄協会の会長である西原篤一さんが来伯。各地で参加を促すPRを実施、参加希望者が増えている矢先の報道だった。
 「確かに震災直後、参加予定者の一割がキャンセルした。しかし、その数を上回る追加希望者があり報道内容とは明らかに異なっている。今回の報道をうけ、仲井眞弘多県知事からブラジル沖縄協会へ事実を確認する電話があったようだ」(与那嶺会長)。
 大会へのツアーを実施するインテルバン、大城旅行社、丸宮旅行者、トラベルウェイの4社は、先月16日の合同会議で参加者数を、団体客400人、個人客380人の計約780人と発表している。
 インテルバンの担当者によれば、「既に旅費の支払も終わっており、各社が名簿で人数を確認した正確な数字」としながら、「どういう経緯か知らないが無責任な報道。メディアが新たな風評被害を生んだ」と憤る。
 琉球新報の記事によれば、情報を提供したのは、4月9日から5月1日まで来伯していた沖縄ブラジル友好協会の安谷屋安谷屋準裕会長(正しくは、準のサンズイがニンベン)で、旅行業者から情報を収集し明らかにしたという。
 前出の4社に確認したところ、「安谷屋氏と接触したことはない。事実がないことを言うわけもない」と言下に否定する。与那嶺会長も会っておらず、一カ月の滞在にも関わらず、県人会にも寄っていないようだ。
 記事で安谷屋氏は、「今は3世、4世の時代になり、インターネットなどを使って日本の情報をリアルタイムで得ている。しかし彼らは日本語ができない人が多い。参加者を減らさないために沖縄は大丈夫と伝えるにしても、ポルトガル語で発信する必要がある」とコメントしている。
 前会長の与儀昭雄氏は、「安谷屋氏が来ていたことも知らなかった。県人会との関係もないのに何故このようなことを沖縄で言っているのか分からない」と苦笑いする。
 今年は、南米の沖縄県人会節目の年。ブラジル85周年、ペルー100周年、アルゼンチン60周年の関連式典で沖縄からの慶祝団の来伯も予定されていることに触れ、「沖縄とブラジルの交流に水を差すような報道は本当に迷惑」とも。
 大会への参加に向け、1年前から同県人会館の日本語教室で勉強している生徒らは、「被災地が苦しんでいる時にお祭りをするのはどうかと思ったし、家族からも心配された」と明かす。
 そのうえで、「それではブラジルにいる私たちの思いは伝わらない。沖縄は被災地からも遠く放射線の被害はない。今こそ団結して日本を元気づけていかないと」と笑顔を見せる。同教室でキャンセルした生徒はいないという。