ニッケイ新聞 2011年5月14日付け
大相撲も、暴力事件や野球賭博についで八百長と—土俵の魅力を失い日本の国技とは遠い。先の春場所は、勝ち負けに金銭が飛ぶ八百長問題が浮かび上がり、場所を開けなくなってファンらは、嘆き悲しんだ。そして、これまで相撲協会は「八百長はない」と突っぱねてきたが、力士も親方も神聖な土俵にカネを投げ暗黒の世界とした責任はどこまでも追い込むのが筋である▼そして—今場所も技量審査場所という珍妙な名前の相撲が両国国技館で開かれている。なにしろ、あの八百長相撲で幕内7人、十両で10人が土俵から追われたのだから、番付が組めなくなっての苦肉の策ながら、相撲好きらは、協会の無料入場券を手に土俵狭しと動く力士の奮戦ぶりに拍手喝采している。審査場所だけれども、星勘定は本場所と同じなので土俵に上がる力士の意気込みも凄い▼7場所連続勝を狙う横綱・白鵬は、13日まで6連勝。大関・魁皇は、すでに大関最多勝の新記録を果たしたし、ブラジルの新入幕・魁聖も白星街道をまっしぐらと快進撃なのも嬉しい。眞に残念なのは、NHKが、余りの不祥事続きに愛想をつかしたのか、実況放映を中止したことであり、TV観戦の楽しみが失われた相撲好きは、「つまんない」とブツブツと呟いているのには、心からご同情申し上げる▼それでも、大相撲の再生に掛ける関係者の尽力には頭を下げたい。あの東日本大震災の罹災者3000人を国技館に招き、津波の苦しさを少しでも癒したいの意気は土俵の命にも通じる。3万人の無料入場券に14万人の申し入れも、相撲人気の高さを物語るものだ。(遯)