ニッケイ新聞 2011年5月18日付け
国立宇宙調査研究院(Inpe)の調査によると、このところ減少傾向にあった法定アマゾンの森林破壊が、3月に前年同月比35%増の299平方キロメートルを記録したため、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)が全国の職員をアマゾンに参集させると14日付ブラジルメディアが報じた。
法定アマゾンの森林破壊は気候変動ともかかわる問題として世界中が注目しているが、1、2月は19・2平方キロだった森林破壊が、3月は299平方キロに急増し、220平方キロだった昨年3月の実績を35%上回った事は14日付エスタード紙の報道だ。
14日付フォーリャ・オンラインでは、正式な報告は週が明けてからの予定だが、森林破壊が増加傾向に転じた事は環境省や政府関係者を驚かせたとも報じている。
というのも、2007年末に不法伐採者への融資差し止めなどを含む法令を定め、Ibamaによる監査なども強化されて以来、森林破壊は減少し続けていたからだ。
法定アマゾンの森林破壊減少は、ジウマ大統領が官房長官時代に、気候変動(地球温暖化)に関する国際会議で約束した温室効果ガスの排出削減の鍵でもあるだけに、火災も含めた形での森林破壊急増は、国際的な約束履行にも影響する。
3月の森林破壊の特徴は、過去5年間の平均では20〜80ヘクタールであった1件あたりの破壊規模が、1千ヘクタールを超える部分も普通に見られるというように、大型機械を使った伐採が増えた事。衛星写真で捕らえにくい部分的伐採もかなりあるようだ。
森林破壊の中心はマット・グロッソ州で、3月の場合は全体の73%、ロンドニア州が同23%を占めているという。
マット・グロッソは、1、2月の実績でもトップだが、その伐採面積は14・4平方キロ、2位のマラニョン州も4・3平方キロで、3月の伐採急増の背景には、下院で審議中の環境保護法に、小規模農家の行った伐採は懲罰の対象とならないなどの条項が盛り込まれる予定である事や、コモディティの需要増加があると見られている。
法改定前の伐採増加傾向は以前からあるが、不法伐採者への罰則適用延期処置が6月11日に終わる事もあり、法改定前の駆け込み伐採防止や懲罰を科すための監視作業強化のため、Ibamaでは、他地域の職員も現行作業を中止し、アマゾンでの伐採阻止に当たるよう要請。現在法定アマゾンに居る職員は520人だが、南大河州から60人など、各地職員がアマゾンに参集する。
なお、農業関係議員らが承認を急いでいる環境保護法改正案は、一部変更に際しての政府との合意が覆った事などで、審議が中断。政府側の思惑通りになるまでは審議延期とみられている。