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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年5月20日付け

 この舞台は一体何だろうー。大衆演劇、クラシックピアノ、琴、尺八、民謡、歌謡曲、てはソーラン節でフィナーレ…。多種多様な芸能が一同に会す舞台はコロニアでしか楽しめないのでは。20日レジストロ、23日マリンガ、サンパウロでは22日、文協大講堂で午前10時、午後3時の2部制である宮下和夫・響ファミリーによる慈善公演『ふるさと、再び』だ▼3・11の震災を受けて、主催者の藤瀬圭子さんは中止も検討したというが、支援と銘打ち元気を取り戻した。共催団体と義捐金活動、9万レアルを送金。宮下さんが復興の思いを込め作曲した『ふるさと、再び』を公演のテーマとした。宮下さんは、日本でCDも販売、支援に充てている▼震災の日、響ファミリーは岩手県田野畑村で公演のため、海辺のホテルにいた。地震を受けてホテル内は大混乱、津波が4階まで迫った。彬斗さんは数分で町が消え去るのを眼前に見た。一真さんも車で避難中、九死に一生を得た。「笑顔になって欲しい」と復興への思いも舞台に込める▼サンパウロ市公演では2年越しのドラマも。09年、アマゾン80の周年の前夜祭。宮下さんの音楽に心を奪われた三世の保科タシオ君が直後に白血病と判明。見舞いに訪れた藤瀬さんから、病床で公演での感動を話す様子を聞き、自作曲『白いフェニックス』を贈った。現在も病と闘うタシオ君は午後の部で宮下さんと初対面するとか▼記者会見のあったホテルのホールで宮下さんは『ふるさと、再び』の一部を弾いた。その調べに宿泊者や従業員らが、足や作業の手を止めていたのが印象的だった。(剛)