ニッケイ新聞 2011年6月2日付け
【既報関連】24日の環境保護活動家夫妻殺害を筆頭に、1週間足らずの間に農民リーダーら4人が殺されるという異常事態に、緊急会議を開いた連邦政府が、恐怖に慄く北部農村部の住民に対し、土地開発抗争への予防対策を講じると共に、殺害予告を受けている人物30人を優先的に保護する事などを決めたと1日付伯字紙が報じた。
カトリック教会が作成したここ10年で殺害予告を受けた人物リストには1855人の名前が記されているが、42人は殺害されているため、生存する1813人の内30人を優先的に保護すると5月31日に発表したのは、人権局のマリア・ド・ロザリオ長官だ。
同長官は5月30、31日に開催された政府の緊急会議構成メンバーの一人で、大統領府総務長官や環境、農業開発、法務各省の関係者らが参加した31日の省庁間合同会議では、農民リーダーや環境活動家保護に関する話合いも行われた。
保護の対象となる人物名や具体的な防止策については明らかにされていないが、5月31日付伯字紙では、不法伐採などを告発して殺害予告を受けたり殺害未遂事件に巻き込まれたりした人物の具体的なリストはないと報じられたのに対し、CPTその他の団体からのリストが次々に届き、CPTのリストから割り出した優先保護者30人の枠も見直しが必要となる可能性があるとは1日付エスタード紙。
法定アマゾンの森林伐採は北部と中西部に共通する問題だが、不法伐採の告発や土地係争問題で殺害事件が起きる例は、圧倒的に北部が多い。
バラー州には保護対象者中12人が住むが、1日付フォーリャ紙によると、農民3人の連続殺害事件が起きた同州東部のノヴァ・イピシュナ市郊外の定住地では、バイクや車の音が近づくと家の奥や茂みに身を隠す、親戚が固まって暮らし、転居を急ぐ者も出るなどの動きが見られている。
政府としては、殺害未遂や予告が2回以上起きた207人の中から30人を選んで24時間の警備体制を敷く事の他、2008年2月に導入された〃火の弓作戦〃を再開し不法伐採の取締りを強化すると共に、不法伐採によって苦しんでいる地域住民への社会的、経済的支援のための〃緑の弓〃作戦の開始を決めたというが、詳細は今後の検討課題のようだ。
ノヴァ・イピシュナでは、不法伐採で罰金を科せられている製材業者の中に、ジョゼ・クラウジオ・R・ダ・シウヴァ、マリア・ド・エスピリトサント夫妻らの殺害を命じた人物がいると見て捜査中。ロンドニアの農民リーダー殺害は容疑者一人が逮捕されたが、CPT創設者のペドロ・カザウダリガ司教は、パラー州での環境活動家夫妻殺害事件は、不法行為に目を瞑り、犯罪者を罰しない体質が生んだものと厳しい発言を行っている。