ニッケイ新聞 2011年6月4日付け
極貧撲滅を選挙公約の一つとしていたジウマ大統領が2日、公約実現のための〃極貧ゼロ計画〃を発表したと3日付伯字紙が報じた。極貧か否かの判断基準は月収70レアルと発表された折、具体的な政策は全体像が固まってから発表と発言していた大統領だが、800人を前に説明を試みた閣僚達は、数字や金額にまごつくといった光景も見られたという。
世界でも最大級の格差社会といわれるブラジルでの極貧者は、月収70レアル以下の1626万7197人と確認した5月3日の関係閣僚会議から1カ月後の〃極貧ゼロ計画〃発表は、閣僚や全国知事、州都市長ら約800人を集めて行われた。
2014年までに1626万人の極貧者をゼロにするための計画は、所得確保、生産性の向上、公共サービスの充実の三つに大別され、年間経費は約200億レアルとの報道は2日の内に流れていたが、国際的にも注目される貧困対策発表の場には、サンパウロ市での環境会議に参加したロバート・ブルース・ゼーリック世界銀行総裁も出席した。
所得確保の中心策は、前政権から続くボウサ・ファミリア(生活扶助)で、現在は1290万家族の受給者を更に80万家族増やすと共に、就学を促すため、15歳以下の子供3人までを対象として加算する手当ても、5人までに拡充する。
環境保護区や森林地帯で保護活動を行っている極貧家庭には、ボウサ・ヴェルデを創設し、3カ月毎に300レアルを支給。同扶助の対象は7万家族と見られている。
また、生産性向上のための具体策は、小規模農家に2年間、600レアルずつ4回の援助を行うというもので、技術指導も行って作物の増収を促すと共に、小規模農家が生産した作物をスーパーなどの流通網に乗せるための支援も行う。
その他にも、地域毎に必要な労働者の数やタイプをまとめた地図を作成し、個人経営者向けの小規模融資などの枠も拡大するという。
三つ目の公共サービスの充実は、全戸への電力供給計画〃ルス・パラ・トードス〃の継続と、全戸、全域への水供給計画〃アグア・パラ・トードス〃の二本立てで、生産活動用水と飲用水の双方の供給を目標とする。
極貧者1626万人は、北東部に59%、北部と南東部に各17%、南部に4%、中西部に3%ずつ居るが、大統領は、貧困者はどこの社会にも居るという社会学者の論にとらわれず、極貧という慢性病に全力を挙げて対処するという。
現政権最優先課題の極貧撲滅対策の発表とはいえ、閣僚達が数字や金額にまごつきながら説明する姿は、いつも中央に座る官房長官が末席に就いた事と共に、パロッシ氏の資産急増疑惑で揺れる政局を建て直し、周囲の目をそらすための方策との印象も残したようだ。