ニッケイ新聞 2011年6月4日付け
【パラー州ベレン発】6月末をもってアマゾニア日伯援護協会での2年間の活動を終了するJICAシニアボランテイアの看護師、形山千明さんは原子爆弾の歴史を理解してもらうための資料展(Exposicao sobre Bomba Atomica, Nunca mais HIROSHIMA e NAGASAKI)を5月に開催した。折りしも、福島原発(原子力発電所)事故が起きたことで一部には「時期的に開催は無理」などとの風評もたったが、むしろ、形山さんは「正確な情報によって原爆の問題点を考えて欲しい」とし、トメアスー文化農業振興協会(ACTA=乙幡アルベルト会長)とアマゾニア国立農業大学(UFRA=沼沢末雄学長)、トメアスーの小中学校2校の協力をえて開催に踏み切った。
展示されたパネルの「きのこ雲の下には・・・」「廃墟からの復活、立ち上がる市民」「消えた街並み」など心を痛めるフレーズに、生徒たちはじっくりと見入っていた。
12〜14日と19〜21日までの2回はトメアスー文化農業振興協会の2階会議室で、16日にはエスコーラ・デゼンバルガドール・ニルソン・マルコ校(Escola Dezembarcador Nilson Marco)で、18日にはトメアスーのルチラーノ(Luterano)校の3か所で開催された。
デゼンバルガドール校では16日の午前8時から夜10時半まで、13回もDVD『ヒロシマの母たちの祈り(ドキュメンタリー30分)を上映した。1回30人の入場者で約400人が来訪した計算だ。
文協では2回目を19〜21日に開催した。19日の午後までに日系人学校、ドトール・ファヴィオ・ルース校の学生たちが文協の会場を訪れた。この時点ですでに延べ1500人余の入場者を記録していた。
文協のある理事は「確かに開催には経費は掛ります。職員一人が付きっ切りだし、その他の経費も必要です。でも、文化事業を目玉とする当協会では、始まって以来の来訪者を記録しました。十字路近辺に在住する小中学生がこんなにたくさん、当協会を訪問してくれることはまずありません。このことだけを見ても、この原爆資料展のおかげだと感じています」と絶賛し、小中学生が熱心にDVDに見入っている姿に感銘を受けたとも語った。
主催の形山さんも「若い人たちに原爆の恐ろしさを伝えることができたことは素晴らしいことです。何かを感じてくれていることが、とてもうれしいです」との感想を述べた。
ベレン市では24〜25日の2日間、同農業大学で開催され、約400余人の学生が訪れ、延べ2千人の来訪者を記録した。ルッチ・エレーナ・ファレシ・パーリャ教授は学生の応援を得て、会場の設定に全面的に協力した。原爆ポスター30枚とポ語訳付きのDVDが訪れた学生らを感動させた。
形山さんは「今回の日本の被災にたいしての復興支援」や「原爆問題」についての意識が高まれば嬉しいですと語っていた。(パラー州通信員=下小薗昭仁)