ニッケイ新聞 2011年6月8日付け
5月24日に環境保護活動家夫妻殺害事件が起きたパラー州南東部は、10万人当りの殺人被害が14市平均で91人に上り、世界一危険な地域と5日付エスタード紙が報じた。同州での殺人事件増加は土地係争問題や麻薬を巡る犯罪が原因とされ、国内一の殺人多発地域も北東部から北部にタイトル移譲となった。
ノヴァ・イピシュナ市郊外の定住地での環境保護活動家夫妻殺害事件をきっかけに注目を浴び始めたパラー州の殺人事件は、州3分割が実現すればカラジャス州都となるはずのマラバ市を筆頭に頻発。同紙によれば、殺人事件急増の背景には、土地係争問題や麻薬密売が絡んでいるという。
マラバ市の場合、07〜09年の殺人事件発生率は10万人当り114人。周辺14市平均の91人と共に、世界一の殺人多発国とされるホンジュラスの10万人当り60人を遥かに上回る数字は、同州や北部をブラジル一の危険地域との不名誉なタイトル保持者の座に押し上げた。
そういう意味では、ノヴァ・イピシュナ市でのジョゼ・クラウジオ・R・ダ・シウヴァ、マリア・ド・エスピリトサント夫妻殺害は本当に氷山の一角だ。
5日付エスタード紙が上げたマラバ市のジャルジン・ダ・パス区は、トランスアマゾニカ道に程近く、土地の不法侵入が増えた4年前から、地域住民リーダー4人が殺され、現在のリーダーも殺害予告を受けている。
最初の殺人事件は住民組織立ち上げから10日後で、バイクに二人乗りでの犯行。この形は5月のノヴァ・イピシュナでの活動家夫妻殺害事件でも同じで、バイクや銃を買い与え、報酬を払えるような人物が背後にいる事を物語っている。
同州での土地係争問題は、レンガや瓦の製造業者が増えた事で木炭の需要が急増、合法的な伐採では供給が追いつかない事も拍車をかけている事は8日付エスタード紙、省庁間会議での対応協議の際、ジウマ大統領が法定アマゾンの土地登録作業の遅れに苦言を呈した事は4日付フォーリャ紙の報道だ。
ノヴァ・イピシュナ市の夫妻殺害は、不法伐採や架空の人物名で土地の不正登録をする製材業者や農園主を告発していた事が原因だった。事件直後に国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)職員が現地の製材業者らに罰金を科したものの、広大で交通も不便な地域の取締りは困難を極め、10年末の土地登録作業は目標値の1・1%を終えただけだという。
7日には軍や連邦警察派遣の監視団も現地入りしたが、カトリックの土地問題司牧委員会(CPT)などは、国有地での不法伐採などの取締り強化と共に、土地係争問題が絡んだ殺人事件の犯人逮捕や断罪例は極僅かという同地域の体質が改善されなければ、治安の改善はないと訴えている。