ニッケイ新聞 2011年6月11日付け
4年間で資産20倍増の報道で政局の混乱を招いたアントニオ・パロッシ前官房長官離任後も、ジウマ大統領は建て直しに困難を覚えていると9、10日付伯字紙が報じている。ジウマ大統領が新長官就任式で混乱乗り切りの方法は自分が見出したと語る一方で、ルイス・セルジオ大統領府調整担当長官後任問題を巡り、労働者党(PT)内が割れるなど、現政権を襲った地震の影響はしばらく続きそうだ。
パロッシ氏の辞任とグレイシー・ホフマン新長官の就任は国際的にも報じられたが、前長官の存在は大きく、現政権の危機はまだ続くとの見方が一段と強まっている。
新長官就任式で、戦友であるパロッシ氏の閣外離脱は大きな悲しみで、前長官は「自分や政府、国のために実に多くの事をしてくれた」と語ったジウマ大統領。しかし、検察が不起訴と決めた時はパロッシ氏を現職に留めておくよう求めたルーラ前大統領に対し、このままでは政局を維持出来ないと、更迭を決めたのがジウマ大統領だ。
9日付エスタード紙には、前大統領が指名したパロッシ氏の更迭とグレイシー氏の任命により、ジウマ大統領は自分自身の実権を示そうとしたとの表現もあったが、8、9日のルーラ前大統領の「ジウマ大統領は実権者として時にかなった決断をした」との発言は、前任者の影が依然として強い事も窺わせる。
この発言はパロッシ氏の閣外離脱は更迭であった事も示唆するが、「ジウマ政権の首相」とも呼ばれたパロッシ氏の存在は、実務型のグレイシー氏選任だけでは足りない事を示すのがルイス・セルジオ大統領府調整担当長官の後任問題だ。
本来なら政党間の調整や政府と議会との意思疎通を行うのが調整担当長官だが、ジウマ政権でこの役目を果たしていたのはパロッシ氏。セルジオ長官に〃(注文書を運ぶ)ガルソン〃とのあだ名もついたように、前官房長官の存在は、連立与党から現政権は対話に欠けるとの批判が出てくる程強力なものだった。
その意味で、セルジオ長官の後任は民主運動党(PMDB)からとの声もあったが、PMDBは後任選定権を放棄。それに対し、調整が待たれるPT党内では、下院議長選以後続く党内の内紛が後を引き、一枚板になりきらない。
セルジオ長官を現職に残した状態での後任争いは元上議で現水産相のイデリ・サウヴァッチ氏の名前内示後も続き、ジウマ大統領を再びいらだたせているが、ジョゼ・セーラ元サンパウロ州知事らは、パロッシ氏の離脱で現政権のもろさが更に表面化すると厳しい評価。誰が調整担当長官になっても、PMDBへの依存度は強くなり、逃れようとする程深みにはまるとの声さえ出てきている。