ニッケイ新聞 2011年6月16日付け
ルーラ前大統領が2009年に提出し、2010年に下院が承認した機密文書の公開年数改定案が、上院審議前に再討議される事になり、最重要機密とされた文書は、永久に非公開となる可能性が出てきたと13〜15日付伯字紙が報じた。
機密文書の公開年数改定案審議は、緊急課題の一つとされ、ジウマ大統領もその就任式で早急に承認するよう働きかけると公約。5月3日の「世界・報道の自由の日」には大統領裁可との予定まで組まれていた。
ところが、イデリ・サウヴァッチ大統領府調整担当長官が12日、エスタード紙のインタビューに、ジョゼ・サルネイ、フェルナンド・コーロル両上議からの要請で同案は再検討されると発言した事で、最重要機密文書は永久に非公開となる可能性が出てきた。
同長官の発言後、大統領府が13日に同案を緊急課題から外す事を通達した時点で、上院本会議での承認は少なくとも8月以降、その後、下院で差戻し審議を経て承認、裁可に至るのは来年以降と見られている。
上院で再検討が加えられる事により、発効が遅くなる事以上に懸念されているのは、下院承認案に加えられた「最重要機密文書の非公開期間の延長は一度のみとする」という部分が、政府原案通りの「非公開期間は無制限に延長できる」に書き換えられる事。
下院承認案に従えば最重要機密文書は最高50年で閲覧可能となるが、この部分が書き換えられれば非公開期間は無制限に延長され、永久に閲覧できない事になる。
現行法での機密文書の非公開期間は、最重要機密30年、重要機密20年、機密10年で、最重要機密は無制限、それ以外の文書は1回の延長を認めている。
これに対し、前政権提出の政府原案は、非公開期間を最重要機密で25年、重要機密は15年とし、機密という範疇は削除。最重要機密の非公開期間は無制限に延長可だが、重要機密は延長不可としていた。
軍政下の迫害や行方不明者の捜索などにも積極的な姿勢を見せ、真相解明委員会の設置実現を提唱していたジウマ大統領が同案再検討を認めた事で、情報公開を支持する労働者党議員との間に緊張も生じている。
また、同案再検討で一部文書は永久非公開の可能性が出てきた事で、歴史家らも、パロッシ疑惑で政局混乱の際に協力したという理由で元大統領二人からの圧力に屈するなら、大統領は依然与党勢力の人質とか、公約や前言に反する行為と、批判の声を上げている。
サルネイ氏は、ブラジルの歴史の傷口を再び開く事になるとし、コーロル氏も国際的な緊張を招く恐れがあるという。政治重視で、国民との約束や真の歴史と向き合う事を忘れたら、民主主義国家は成立たない。