ニッケイ新聞 2011年6月23日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)が22日、6大都市圏の5月の失業率は6・4%で、5月としては2002年3月の統計開始以来、最良の記録と発表したと同日付G1サイトなどが報じた。
経済がやや減速し始めたとの声が出ているブラジルだが、5月の失業率は4月と同水準の6・4%。IBGEでは、大サンパウロ市圏の工業部門で4万9千人の新規雇用などの明るい材料も見えると報告している。
5月の失業率としてはIBGEの統計開始以来最低との報告は、昨年同月の7・5%などと比べても頷ける。レアル高などで輸出伸び悩みがいわれる工業界の雇用は、ミナス州ベロ・オリゾンテでも3万人増え、全体で7万人増という数字は確かに明るい材料だ。
IBGEでは、労働者の給与平均も1566・70レアルで、5月としては統計開始以来の最高と報告。前月比では1・1%、昨年同月比では4%増額しているという。
各都市圏を個別に見ると、昨年同月の5・3%から4・7%になったベロ・オリゾンテが最も失業率が低く、南大河州ポルト・アレグレ5・1%、リオ5・4%、サンパウロ市6・7%、ペルナンブコ州レシフェ6・8%、バイア州サルバドール10・5%と続く。
サルバドールの失業率は昨年同月比で1・5%ポイント下がっているというが、6月13日付エスタード紙などで、バイア州では鉱業資源開発が盛んに行われていると報じられていた事を考えると、まだ高目という印象を受ける。
6大都市圏平均を下回る5・4%を記録したとはいえ、昨年同月の4・8%より失業率が上がったリオ都市圏も、気になる存在だ。
失業者数自体は、4月の153万7千人から152万2千人に減っており、雇用者総数は前月比0・5%増の224万3千人になった。
昨年同月の失業者は176万4千人だった事や5月の雇用者数が昨年同月比2・5%増との数字などを見ると、国際的な金融危機からの回復期から安定期への移行や、雇用創出が進んでいる事がわかり、派遣会社勤務も含めた正式雇用も高水準を保っているという。
19日付エスタード紙には、ブラジル民一人当たりの国内総生産(GDP)額は約1万ドルで、各種ライセンス取得手続きの煩雑さや高税率、基幹構造の脆さを改善すれば、2万1600ドルまで向上するはずとある。
熟練工不足といった問題解決のために労働者の質の向上を図り、2014年のW杯や2016年のリオ五輪関連事業や持続可能な開発計画への投資、生産性向上などに本気で取り組めば、景気を後退させずにインフレを抑制する事や雇用状態の更なる改善の可能性が高まるが、行事終了後は元の木阿弥とならないための長期展望も必要だ。