ニッケイ新聞 2011年6月23日付け
パラナ州クリチーバ市で、死亡した夫の凍結保存精子を使った体外受精で授かった女児が20日に無事出産したと、22日付エスタード紙などが報じている。
すでに亡くなった人から採取、凍結保存された精子を使用して生まれた子供は国内初で、裁判所が出した許可も前例がないものだった。
母親となったカチア・レネルネイエルさん(39歳)は2010年5月、死去した夫の精子を使用した人工授精の許可を裁判所から得ていた。
結婚してから5年経っても子供に恵まれなかった夫婦は、2008年から3年間不妊治療を受けていたが、2010年2月に夫のロベルト・ジェフェルソン・ニエルスさん(33歳)がガンで亡くなってしまったため、妻のカチアさんは一人ででも計画を進めることを決断した。
亡くなった人の凍結保存精子を使った受精についての法律は国内では定められておらず、夫の事前承諾がなかったため、倫理的違反を恐れた地域の医学評議会と研究所は許可を出さなかったが、夫も妻と同じ意志を持っていたとみなした裁判所が、2010年に5月に凍結保存精子による授精を許可。カチアさんは同年9月、3度目の試みで妊娠に成功した。
ルイーザ・ロベルタと名づけられた赤ん坊は父親に似ているというカチアさんは、「彼女の誕生は私の人生の新しいスタート」と述べている。
連邦医学評議会は2011年1月、死去した人の同意が確認されれば、凍結保存された精子による授精を許可することを決定している。決定後、国内では死後生殖についての議論に波紋が広がっている。
国外では、イギリスやオーストラリア、アメリカ合衆国のいくつかの州が父親の事前の承認があれば死後生殖を認めているが、ドイツやスウェーデン、フランス、イタリア、カナダは認めていない。また、ベルギーやギリシャなどでは父親の承認がなくても認められている。
カチアさんの場合、父親側の家族による証言が同意書に替わるものとして認められたが、弁護士らは、家族証言が本人の署名入りの同意書同様に有効か否かを、司法の場で正式に決める必要があるという。