ニッケイ新聞 2011年6月23日付け
コロニアに残る三線、沖縄語を記録に残そうと沖縄から調査団が来月来伯するにあたり、ブラジル沖縄県人会(与那嶺真次会長)は今月末まで、三線の鑑定依頼、インタビュー対象となる沖縄語話者を募集している。16日にあった記者会見で与那嶺会長は、「沖縄文化の保存、継承に繋げたい」と広く呼びかけている。詳しくは、同県人会本部(11・3106・8823)まで。
鑑定を行なうのは、岸本吉雄(琉球古典音楽安冨祖流絃声会名誉会長)、岸本尚登(琉球三線楽器保存育成会会長)、外間善盛(同会副会長)の3氏。
山城直吉(琉球諸語継承事業審査専門部会長)、善平朝信(同部員)、本事業を実施する「沖縄県対米請求権事業協会」の神谷良昌氏の計6人が来伯する。
今回の派遣は、琉球古典音楽保存会の知花真勲相談役が会長だった08年、高峰善伸県議会議長に三線を寄贈したことから始まる。
翌年10月、同県人会は「沖縄県三線鑑定士の会」に来伯を要請、さらに知花氏が高峰議長を表敬訪問したことなどで実現に至った。
昨年発行された『写真で見るブラジル沖縄県人移民100年史』の編集委員長を務めた宮城あきら氏は、「三線は沖縄文化の基本を成す。王朝時代から、平和の象徴として刀の代わりに三線を床の間に置く。移民が持ち込んだ先祖伝来の家宝もある」と指摘。同史編集の資料収集の過程でも貴重な三線がいくつも発見されたという。
戦争で甚大な被害を受けた沖縄には古い三線は少ない。「200年以上前のものがコロニアにある」と宮城氏。
県人会では、笠戸丸移民の故宮城伊八氏が持参したとされる三線を始め、歴史的価値のある15本を把握している。
また、現在徐々に消滅しつつあり、09年にユネスコに消滅危機言語として認定された沖縄語の調査も進める。
ブラジルには20以上の市町村人会があるため、純粋な各地域の言語を話す人がいると考えられており、インタビューや対話を音声収録し、沖縄語の再生に役立てるのが目的。
沖縄文化の講座を開いている与那嶺恵子氏は、「基本的に対象は1世だが、2世以降でもアクセントが残っている人がいる」と呼びかける。
調査団は7月7〜10日までサンパウロ市、11〜13日までカンポ・グランデ市に滞在、鑑定、聞き取り調査を行なう。
アルゼンチン、ペルー、ボリビア、米国でも実施、調査結果は今年10月にある『第5回世界のウチナーンチュ大会』で発表される。