祝103周年 移民の日特集
ニッケイ新聞 2011年6月30日付け
「どんどん上を目指すので、応援お願いします」。 5月技量審査場所で31年ぶりとなる初入幕後9連勝を含めた10勝5敗の成績を収め、 敢闘賞を獲得した日系人力士魁聖(本名=菅野リカルド、24、三世)から本紙に、そんなコロニアに向けたメッセージが届いた。ブラジル初となる後援会が発足し、9月場所終了後の凱旋帰国も決まるなど、当地でも脚光を浴びている。サンパウロ市サントアマーロ区にある実家を訪れ、その原点を追った。(以下、敬称略)
19日の正午頃、テレビの前に家族が集まった。「今からリカルドの特集が始まるの」と嬉しそうに語る母親ロザーナ(48、非日系)。TVグローボがリカルドの所属する友綱部屋や菅野家を取材した。リカルドの姿が映ると、家族は照れ笑いを見せつつも、母親は「もう5年も会ってないのね」と涙ぐんだ。画面越しだが、久々に家族が一堂に会した一時だった。
番組が終ると近所の人からお祝いの電話が続いた。母親は「息子が有名になって不思議な気持ち。でも遠くにいても私達は家族」と頷く。
リカルドは今年の7月で訪日から5年、「帰化」の2文字が現実味を帯びる。「こっちで暮すつもりはないみたい」と母親は寂しがる。
13日に父親の一郎(53、二世)が電話した時、7月の名古屋場所に向けて稽古中で、「最近は日本人の様に日本語を話せる様になった」と意気軒昂だったという。
父親に対し、リカルドは「日系人であることが僕を日本に向かわせたと感じる。毎日相撲を取れて幸せだ」と思いの丈を語った。また友綱部屋を通して、本紙の取材に対し、「これからもどんどん上を目指して頑張りますので応援宜しくお願いします」と祖国ブラジルで応援するコロニアへのメッセージを送った。
躍進の裏には当地から応援する家族の姿と、日本に対する深い想いがあった。彼の快進撃はまだ始まったばかりだ。