ニッケイ新聞 2011年7月6日付け
ベネズエラのカラカス市で4日夕方、がんの手術を受けたキューバから約一カ月ぶりに帰国したウゴ・チャベス大統領が大統領府のバルコニーに姿を現し、数千人の熱狂的支持者を前に30分余り演説して健在ぶりを見せたと5日付エスタード紙などが報じている。
テレビで放送された軍服姿での演説風景はチャベス大統領の復帰を印象づけた。大統領は、20日の再手術後は24日まで集中治療室にいたこと以外、病気に関する詳細は明らかにせず、「病気との戦いに勝ち始めている」「私の体内に巣食う悪に我々は勝ち始めた」などと述べた。
チャベス大統領は20分以上話したところで声がかすれ始めたが、水を飲み、演説を続けた。30分を過ぎると、演説を聞くためにボリヴァル広場に集まった支持者からは、「休養を、休養を」と容態を案ずる声が飛び交った。
スペインからの独立200周年の記念日(7月5日)を前に帰国したチャベス大統領は、回復期だから注意しなくてはならず、記念式典の全てには出席できないと説明した。同大統領は不在による与党の影響力低下を避けるため帰国を急いだとみられるが、これに対し、同国メディアのアナリスト、ルイス・ヴィセンテ・レオン氏は「彼のとった感情的な行動は短期的には支持者に対してポジティブであるかもしれないが、それが病気や将来の心配による不安を解決するかは別の問題」と述べている。
チャベス大統領の突然の帰国によって、同大統領の病気についての不確実性の問題を抱えていたベネズエラ政界は、はたしてチャベス大統領はこのままカラカス市に残るのか、キューバへ戻って病気の治療を行うのかといった疑問に、再び揺らぎ始めている。
副大統領のエリアス・ジャウア氏は同日、内閣の再編成を話し合うための閣僚評議会との会合を5、6日に行うことを発表している。
チャベス大統領は一度も政治的後継者の名前を挙げたことがなく、副大統領や大臣、兄など、最も知られた味方でさえ、社会主義国の結束を維持するカリスマ性を持っていない。同大統領に何かあった場合は、彼自身がコマンドしているエネルギー協定や経済、政治を危険にさらすことになる。