ニッケイ新聞 2011年7月12日付け
弓場農場の文化拠点活動の一環で、外部芸術家との交流を目的とした演奏会『芸術の絆を紡ぐ集い』が6月26日に同農場内のテアトロ・ユバで開催された。サンパウロ市内の音楽学校フクダインスチチュート(福田リカルド校長)の3グループ42人を招待し、弓場バレエの愉快な踊りや、同学校生徒の優雅なクラシック演奏は、立ち見も含め350人以上の観客を魅了した。
午後5時頃から劇場に隣接する食事コーナーではヤキソバ、焼きおにぎりの他、漬物、味噌、陶器など弓場自慢の品々を販売。近隣から訪れた人たちが賑わいを見せた。午後8時に幕が開き、弓場バレエ団が麦わら帽子など田舎の衣装に身を包んでのダンス『田舎のお祭り』が始まると会場は一気に熱気に包まれた。
続いて10歳以下のかわいいバイオリン演奏家達4人が「荒城の月」など5曲を披露した。その後、同農場で弦楽を学ぶ生徒と福田オーケストラが「オーバーザレインボー」で共演。手作りの劇場に響く柔らかな音色に来場者は目を閉じて聞き入っていた。
続くチェロアンサンブルはビートルズなどを演奏し、バイオリンとは違った重厚な音で観客をひき付けた。
トリを飾る福田オーケストラは14人が舞台に立った。途中、奏者3人が1本の弦で演奏するなど楽しい演出で会場を沸かせた。日本復興の願いを込め、「ふるさと」「さくらさくら」を演奏すると、観客は自然と歌詞を口ずさみ、会場は一体となった。
観客からのアンコールに「『千の風になって』を弾きます」と福田校長が応えると、「おおー」と客席からは喜びの声が漏れた。踊りと音楽で彩られた公演は午後10時頃に幕を閉じた。
アリアンサ移住地在住の若栗康一さん(78、富山)は、「弓場バレエは特別。入植祭にも毎回訪れますが、何度見ても飽きないですね」と話した。弓場は初めてという東喜美絵さん(52、二世)はボツカツから来場。「バレエと演奏で2度、感情が溢れて泣いてしまいました。日本の曲が聞けて嬉しい。また訪れたいです」と感動を語った。
指揮者の福田リカルド氏(47、二世)は「震災後、日本に向けて音楽でメッセージを伝える場を探していたところ、小原さんが誘ってくれた。日本が残る弓場で日本の曲を演奏できたことを感謝したい」と述べた。
今回コーディネーターをした小原あやさん(39、二世)は「幅広い年代が来場し、弓場と外との絆だけでなく、新しい世代との絆も築くことができたと思う。12月に迎えるテアトロ誕生50年にむけ、更に文化活動を活発にしていきたい」との展望を語った。