ニッケイ新聞 2011年7月23日付け
ブラジル政府の抱える負債が上半期で1120億レアル増え、1兆8千億レアルに達したと22日付伯字紙が報じた。経済基本金利(Selic)引上げで利息の支払いは979億レアルに膨らむなど、金利とインフレが国庫も直撃している。
米国政府と同議会が史上初の債務不履行となるのを避けるべく攻防を続ける中、国際的な金融危機からの回復が早く経済は順調と見られていたブラジルも負債が増大している事が明らかになった。
政府関連支出がルーラ前政権後半に急増した事は周知の事実で、前政権も支出削減を図ろうとしたが、ジウマ政権に移行後も、前政権の負の遺産である議員が提案したイベントなどの経費支払いを渋るなど、政府の金回りは決してよくない。
そうはいっても、経済活動は順調で、税収も昨年より1カ月も早い22日正午過ぎに8億レアルを超えたではないかと言われそうだ。しかし、上半期の連邦政府負債額は1120億レアル増え、負債総額は1兆8千万レアルに達したというのだから、楽観的に見ていい状態とは言い難い。
上半期の負債増額の最大要因は利息の支払い。昨年6月は10・25%だった経済基本金利は20日に12・50%に引上げられたが、上半期の利息の支払いは979億8千万レアルとなっており、負債増額分の87・96%を占める。
一方、企業への貸付資金拡大のために、社会経済開発銀行(BNDES)が上半期に国庫から受け取った350億レアルも、本をただせば短期国債を中心とした民間からの資金が主力だ。
上半期の国債発行額は買取額を134億1千万レアル上回っているが、個人や企業が投資として購入する国債は、前もって利率が決まっているタイプと、基本金利と利率が連動するLFT、政府の公式インフレ指数IPCAと利率連動型のNTN—Bの3種類。
今後の利息の支払い額が計算しやすい利率固定型国債は昨年の上半期より40%以上増え、全体の38・13%。利息の負担が大きいLFTは現政権終了までに8割が満期を迎える予定で、徐々に減らしたいという政府側の意向もあり、その比率は過去最低の30・91%に減少した。
現政権の金融引き締めは、金融取引税などの税率や基本金利の引上げと公共支出削減などによって行われているが、ルーラ政権以降の8年半で国の負債は1兆レアルも増大。「ありもしない金を湯水のように使い、借金を前提にした成長を遂げてきたブラジルへのつけは大きく、今後もその負担は増えるのみ」と評価する専門家もいる。
所得向上や失業率低下が伝えられる一方、4月末の国民の借金は過去最高の6530億レアルなど、連邦負債と家計負債の双方が増大とあれば、企業の負債増額を懸念する声も高まりそうだ。