ニッケイ新聞 2011年7月28日付け
7人のろう者が非識字層の障害者にエイズ教育を行う『プロジェクトたんぽぽ』が、ペルナンブッコ州で行われている。15日にサンパウロ市のニッケイパラセホテルでその責任者らが記者会見し、その概要を説明した。
ブラジルでは毎年1万人以上がエイズで死ぬと言われている。中でも障害者に対しては、有効な病気予防知識の教育方法が確立されておらず、高い感染の危機にさらされてきた。
「障害者としての経験を活かそう」とパトリシア・アルドーゾさん(40)ら現地に住む7人のろう者が立ち上がり、それをDPI(障害者インターナショナル)日本会議が支援することになり、JICAが後援して08年から事業化された。
貧困に加え、障害者率が高いペルナンブコ州15市で、同7人は昨年から障害者やその家族、専門家など800人以上を対象に、HIV(エイズを発症させるウィルス)の感染予防や偏見の根絶を目指し、講習会を行ってきた。
講習には様々な年齢、障害を持つ参加者が訪れるため、対象者のニーズにあった教材を作成し、手話、寸劇やイラストなどを駆使して啓発を行った。ほかの障害への理解を深めるため、点字も学習した。
数多くの手話も考案し、「以前は文字で表現されていた『HIV』を、ウイルスが体を蝕む様子を表す手話にしたら、大きな理解の助けになった」と、パトリシアさんは眼を輝かせた。
「これまでは、同じ障害を持つ者同士で閉ざされた環境にいたが、互いに交流するようになった」と話すのはミレーリ・ルセーナ・デ・リラ・バスコンセーロスさん(27)。
国外でも講習会を行ったところ評価され、第8回DPI世界会議南アフリカ大会では発表者にも選ばれたという。
連邦政府や各州保健省も連携し、10月からは事業の第2段階として、築き上げた手法を北東部の他州や北部地方へも拡大していく予定。
西村正樹DPI日本会議副議長は、「取り組みを行う我々はマイノリティ。しかしその結果は、健常者も含め社会全体に還元される」と語った。