ニッケイ新聞 2011年8月4日付け
ジウマ大統領が2日、ドル安レアル高で打撃を受けている国内製造業支援のため、2011、12年の2年間で245億レアル規模となる税制優遇処置と貿易障壁強化の方針を発表したと3日付伯字紙が報じた。
今回発表された新政策「ブラジル・マイオール(より大きなブラジル)」は、ドル安レアル高による中国製品を中心とした格安品の輸入急増が、国内製造業者の競争力低下や輸出産業の伸び悩みを招き、景気減速まで引き起こしている状況を打破するための政策の第一歩だ。
為替の不均衡による国内産業への影響はこのところ益々顕著で、インフレ抑制のための経済基本金利引上げやクレジット引締めと相まって、6月の工業生産は5月比1・6%のマイナス成長との地理統計院(IBGE)報告は、新政策発表の直前になされた。
工業生産が前月比1・6%低下という数字は2008年以降2番目に大きな落ち込みで、今年上半期の成長は1・7%止まり。6月までの12カ月間の成長率は3・7%だが、この数字も、2010年10月に過去12カ月で11・8%の成長を記録して以来、連続して落ち続けている。
このような現状に、国内製造業保護の必要を覚えた政府がまとめた新政策は、マンテガ財相が最終調整にあと15日欲しいと言うのをジウマ大統領が拒否して発表といういわくつきでもある。
詳細は追って発表される部分もあるが、主項目の一つは、服飾、製靴、家具、ソフトウェア業界への税制優遇処置で、これら4部門は、給与支払額の20%に相当する社会保障院(INSS)の雇用者負担を免除される代わり、ソフトウェア業界は売上の2・5%、それ以外の業界は1・5%を納入する。2012年12月までの雇用者負担分と売上への課税分の差は13〜16億レアルと見られているが、社会保障費の減少を防ぐため、この差額は国庫財務局が補てんする。
また、工業製品輸出に関しては、輸出額の3%に相当する額を生産工程で支払われた税負担への還付として払い戻す。還付率は4%に引き上げられる可能性もある。
更に、輸入品に対するダンピング審査などを強化するため、専門家を90人増員。審査期間は15カ月から10カ月に短縮する他、国内同様中国製品の流入が激しく、共通関税採用のメルコスル加盟国に対し、約100品目の輸入関税引き上げを求める方針だ。
年4〜5%程度の利息で利用できる社会経済開発銀行(BNDES)の開発向け投資も20億レアル増額される事になっており、自動車産業での雇用創出や投資への特別処置も検討中のようだ。
新政策については、中国に対抗する助けにはなるが、奪われた市場を新製品開発で奪還するにはまだ不足との声が関係者から出ている様だ。