ニッケイ新聞 2011年8月10日付け
本物と見間違うほどの精巧さで作られる日本独自の文化、食品模型の専門店『すがもり工房』を営む菅森弘昌さんが5日、SENACアクリマソンで講演を行なった。
デザイン関係、食品産業に携わる人などをはじめ約60人が訪れた。
展示されたパン、コッシーニャなどの食品模型に目を丸くした来場者らは「一体どうやって作るのか」と興味津々。早速作り方や必要な道具の説明から講演は始まった。
「アイスクリームなど、常温で溶けるもの以外は本物の食べ物で型が取れます」。取った型に液状塩化ビニールを流し込み、加熱することで固めて着色する、というのが基本の工程だ。
型から取り出した豆一粒一粒を丁寧に着色しフェイジョアーダを製作。来場者らは、目を凝らして各工程を眺め、メモを取りながら盛んに質問していた。オーブンから完成品が現れたときは歓声が上がるほどの関心ぶり。
「倒れたパフェ」「クリープを入れる瞬間のコーヒー」などユニークな作品の模型を手にすると、あまりの精巧さに驚きの表情が浮かぶ。
「髭や足の型を全て別々に取るから一番時間がかかる」という伊勢海老を手に取った来場者らは、「色まで本物みたい」「意外と重い」などつぶやきながらじっくりと観察し、記念撮影する姿も見られた。
かつては医療模型も製作していたが、サイトを立ち上げ人気が出たことから、今は食品模型一本に絞っている。海外からの注文もあるという。
技術を教える学校はなく、試行錯誤の中で様々な食品を作り上げてきた菅森さんは、「一番やりがいを感じるのは作るのが難しいものに出会った時」とチャレンジ精神をのぞかせた。
写真家の北岡正則さん(73、サンパウロ市)は、「ネットで見てから興味があった。初めて見たが感動した」と語った。
松野アリーナさん(71、サンパウロ市)は、「リベルダーデのレストランに飾られた食品模型がとてもきれいで、作り方を見てみたかった」と嬉しそうに語った。