ニッケイ新聞 2011年8月12日付け
国立宇宙調査研究所(Inpe)の報告によると、サンパウロ州やリオ州などでの風水害は今後60年で倍増し、海岸部の降水量は3倍になる可能性ありと9日付伯字紙が報じた。地球温暖化による海水面温度上昇などを原因とする予想は、大気汚染による健康被害同様、見過ごしに出来ない内容だ。
1月に起きたリオ州山間部の土砂災害は900人以上の死者を出し、世界規模の自然災害となったが、洪水や土砂崩れなどが益々増えるとの予想は、大西洋の海面温度がここ60年で0・6度上がった事などを基にはじき出された。
同期間中の地球上の大気温は0・8度上がっており、大西洋の海面温度上昇と相まって海水や樹木の水分蒸発が活発化すれば、雲の発生も盛んになり、落雷や大雨が起こり易くなるなど、地球温暖化の影響をつぶさに示す研究は、米国研究機関との共同作業だ。
過去60年の気温や水温上昇率がそのまま維持されれば、海岸部の雨は3倍に、内陸部の風水害は2倍になるという。
サンパウロ市とカンピーナス、リオの3市で起きた60年間の自然災害を、落雷や降雹、竜巻、突風などに分け、海水面の温度と共に分析した結果によると、気候変動には大西洋の水温上昇と太平洋の水温低下(ラ・ニーニャ)の双方が影響。市街地ではコンクリートで固められた分、気温上昇率が高く、サンパウロ市の気温は2度上昇しているという。
太平洋の海面温度を原因とするラ・ニーニャやエル・ニーニョと旱魃や大雨、サンパウロ市の気温上昇と落雷頻度についてはこれまでにも様々な報告があるが、Inpeでは、上空で発生する雷まで観測できるシステムを、南東伯と南伯、中西伯には年内、北伯と北東伯にも2012年中に導入し、全国的な災害予報も可能にする方針だ。
ルーラ政権時代に提唱され、ジウマ大統領も実行を約束した防災システムの完備には通報体制の整備も不可欠。今後は省庁間の調整が必要だが、それと同時に、地球温暖化の最大要因である温室効果ガスの排出規制も忘れてはならない。
サンパウロ州環境浄化技術公社(Cetesb)によれば、2010年の大サンパウロ市圏の大気状況は、悪い、不適切とされた日が61日、普通が198日で、良いとされたのは僅か106日との報道は、7日付エスタード紙や9日付フォーリャ紙。
普通とされた日も、世界保健機構(WHO)の基準に照らせば健康被害は皆無ではなく、呼吸器系疾患を持つ人も安心して過ごせた日は30%弱という実態は、保健衛生面からも懸念される。
大サンパウロ市圏の大気汚染の主要因は、車の排気ガスや工場排煙に含まれる窒素が元となるオゾン増加で、少雨で乾燥、風のない晴れた日は要注意だ。異常乾燥も温暖化の影響だから、温室効果ガス排出が削減されない限り、風水害や健康被害増加防止は不可能だ。