ニッケイ新聞 2011年8月17日付け
運輸から農務、観光各省に広がる汚職告発の動きの中、上院では大統領がもっと積極的に汚職浄化に取り組むよう求める動きが出ていると16日付伯字紙が報じた。ジウマ大統領には、下院でくすぶる不満に耳を傾けつつ、来年以降の経済負担増加回避という離れ業が求められている。
大統領の直接選挙開始以来、第1期としては過去最高の3人の閣僚更迭など、難しい舵取りを迫られているジウマ大統領に、上院議員の一団が汚職浄化をもっと進めるよう求めている。
その一例は民主運動党(PMDB)のペドロ・シモン上議で、「汚職浄化は共和党(PR)やPMDBだけで済ましてよいはずがない。労働者党(PT)だって対象とされるべき」と息巻く。
国際的な経済問題だけに触れて演説を終わろうとしたPTリーダー、ウンベルト・コスタ氏は、周囲に促され「汚職浄化は政府が取り組んでいる問題の一つで然るべき機関への責任委譲が必要」と発言。同党のジョージ・ヴィアナ氏やエドゥアルド・スプリシー氏らはもっと積極的に汚職浄化賛成を表明した。
運輸省絡みの汚職では、輸送インフラ局(Dnit)のパゴット元総務理事が、辞任後にも契約書に署名した事が判明するなど、摘発=根絶にはならないが、運輸省関連でPR、ヴァギネル・ロッシ農務相の贈収賄疑惑も表面化した農務省ではPMDB、公金横領などに問われている観光省はPMDBやPTなど、連立与党安住の地を揺すっているのが今回の汚職摘発ともいえる。
観光省絡みの逮捕劇では、手錠の使用や逮捕者の写真漏洩など、行き過ぎや思慮不足を問う声も上がり、ジウマ大統領やジョゼ・E・カルドーゾ法務相も不満の色を隠さない。その一方、汚職撲滅は最優先事項と意気盛んなのは、任期更新直後のロベルト・グルジェル検察庁特捜局長官だ。
政界の動きに精通する学者の中には、汚職浄化は経済運用に困難を抱えるジウマ政権が国会などからの突き上げをかわす方策の一つと見る向きもあるが、この方策がいつまでも持たない事は大統領も重々承知だ。
実際に下院では、各議員が提出して承認された事業への支払いの遅れなどで不満が昂じ、政府に都合の悪い議会審議委員会設置やプロジェクト承認、税収の20%を政府が裁量できるよう定めたDRUの延長拒否などを匂わす行動が起きた。
緊縮財政で経済活性化計画(PAC)への支出も数%に抑えている政府には、国家公務員や司法官、警官や消防士の給与増額や年金調整案の通過は、多額の負債で破産状態となったギリシャの二の舞を踏む事を意味し、危機克服のための国会の協力は不可欠。議員立法分の事業費払い出し額の目処さえ立たない中、調整担当役のイデリ・サウヴァッチ長官らの役割が益々重要になってくる。