ニッケイ新聞 2011年8月26日付け
米国の雑誌『フォーブス』が発表した世界で最も力のある女性100人のリストで、ジウマ大統領は3位に大躍進と25日付伯字紙が報じた。ラ米一の経済大国初の女性首長の躍進は、経済危機下でブラジルが果たすべき役割への期待の表れともいえるが、議会運営での大統領は「労働者党(PT)や民主運動党(PMDB)の虜」との表現も飛び出している。
フォーブス誌による女傑番付は毎年発表されるが、昨年95位だったジウマ大統領が、今年の番付では、ドイツのアンゲラ・ドロテア・メルケル首相、米国のヒラリー・クリントン国務長官に次ぐ3位に大躍進した。
過去に前例が無いほどの大躍進は、ラ米一かつ安定感のある経済国としてのブラジルへの期待の表れとの評価は、政治・社会学者のファッチマ・パシェコ・ジョルドン氏によるもの。常に与党やメディアからの攻勢の中にある大統領には、重要な意味を持つに違いないとまで記している。
危機表面化後の欧州でもある程度経済的な余力を残すドイツの首長、メルケル氏や、債務不履行騒ぎや信用格付け引下げ後も、同国国債以上に信用できるものは無いと買いが殺到した米国No.2のヒラリー氏以外に凌ぐ者なしとされたのがジウマ大統領だ。
だが、世界3大女傑といえど、国内での政権運営は、ミシェル・テメル副大統領率いるPMDBや自らの所属政党であるPTの顔色を見ながらでなければ成り立たない事は周知の事実。UOLとフォーリャ紙が24日に行ったインタビュー〃権力と政治〃でも、「議会でのジウマ大統領はPTとPMDBの虜との声があるが」と水を向けられたセアラ州のシヂ・ゴメス知事が、「その通り」と答えている。
同知事はルーラ前大統領の根回しで2010年の大統領選出馬を諦めたシロ・ゴメス氏の弟。兄のシロ氏がセアラ州知事など、政治家として歩み続けてきた背景には、先達のタッソ・ジェレッサッチ氏の影響があった事にも言及した。
その意味でジウマ大統領への影響が大きいのはルーラ前大統領。アントニオ・パロッシ元官房長官の資産急増問題に始まり、運輸、農務、観光、自治の各省や、パウロ・ベルナルド通信相、グレイシー・ホフマン官房長官を巡る汚職疑惑を告発するメディアを前に、副大統領や与党との話合いに努め、2012年の選挙戦出馬希望者の調整を行う年末まで更迭はないとの大統領発言に、「政治家としての動き方が判ってきた」と評価したとの報道もある。
与党内の不満が原因で保健関連予算についての暫定令などの審議が遅れている事に対しては国民の抗議行動も起き始め、政権党の立場より下院議長の責任を重視したPTのマルコ・マイア氏が、9月下旬の審議との案で野党側と日程交渉を行っている。