ニッケイ新聞 2011年8月30日付け
世界的な経済危機の影響などで、ブラジルの経済成長率見込みも下方修正される中、自動車メーカーは当国への投資を増大させ、現在9つの工場を建設中または建設予定と28日付エスタード紙が報じた。中国企業も含む各社が2014年までに予定している投資額は50億ドルに上るという。
2014年までに50億ドルをつぎ込み、建設中または建設予定の工場9つという数字は、中国と並ぶ世界最多。今年の経済成長率見通しは4%以下に下方修正されたにも関わらず、一般大衆車からドイツBMW社製の高級車までが当地で生産される予定だという。
国内需要が300万超の市場なら、消費者への迅速な対応と通貨の不安定さによる損失回避のために現地に乗り出す方が正解—。これは、具体的な投資額こそ発表していないが、ブラジルでの工場建設の意向を表明済みの日産社長の弁だ。
また、ウルグアイのEffaは、サンタカタリーナ州とゴイアス州に2億ドルを投じ、中国Lifan社の車製造用と自社ブランドの車製造用の2工場を建設の予定。
その他の工場建設予定メーカーと投資額は、Fiat23億ドル、トヨタ6億ドル、現代6億ドル、JAC6億ドル、Chery4億ドル、スズキ6千万ドル。
これらのメーカーは大衆車の生産が中心だが、ドイツのBMWは、高級車の製造開始を近日中に発表の予定という。
現在のブラジルは、Fiatにとっては世界最大、フォルクスワーゲン(VW)にとっては同2位、ジェネラルモータースにとっては同3位の市場。ともすれば本国より売り上げが多いとあっては、欧米や日本のメーカーの進出が進むのも無理はなく、販売も増加の一途。今年は370万台の売り上げが見込まれ、新工場完成の暁には年産500万台となる見込みだ。
また、このところブラジルへの関心が高いのは中国メーカー。全体的に小規模だが、国内に存在する企業数では世界最大を誇る中国からの引き合いはGeely、BYDなど数社に上るという。
今年のブラジルの経済成長率は、経済不安などの要因もあり、4%程度と見られているが、それでも欧米や日本に比べると高成長が期待されている事は、世界的な信用格付け会社の一つ、S&Pが現地通貨建ての格付け見通しを引き上げたとの報道などからも窺える。
ブラジルでは実績の少ない中国企業は、知名度の低さをカバーして輸入販売を行うため、宣伝にテレビなどで顔が知られる人物を使うなどで一工夫。輸入車の宣伝にグローボ局のファウスト・シウヴァを使ったJACの場合、〃ファウストンの車〃と指名してくる客がいるという。
Effaの場合は、レコルヂ局のロドリーゴ・ファロとググ・リベラトを宣伝に起用。当面は、著名人を使って大衆受けする番組に宣伝を挟み込むやり方が続きそうだ。