ニッケイ新聞 2011年9月1日付け
今年上半期のサンパウロ市での新築家屋販売が、昨年同期比で31・3%減り、2005年上半期以来、最低の水準になったと8月31日付伯字紙が報じた。昨年7月からの12カ月間で28・6%も値上がりした事などが、持ち家ブームに水を差し始めたようだ。
景気回復と所得向上などを背景とした持ち家ブームは新興中流階級を中心に拡大したが、今年上半期のサンパウロ市やその周辺38市では、新築家屋の販売が昨年同期比で31・3%と28%の減少を見せた。
サンパウロ市の場合、新築家屋数は1万3992軒で販売数は1万1680軒。昨年同期が、新築家屋数1万3581軒に対し販売数1万7005軒だった事からいけば、提供された家の数は3%増えたのに、売れた数は31・3%も減っている。
同様の傾向は周辺38市を含む大都市圏でも見られ、同地域の新築家屋販売数は前年同期比で28・6%減。大都市圏の場合、新築家屋数も9%減っている。
サンパウロ市の販売減少は、持ち家を希望し、購買力も出来た新興中産階級の人達が殺到した事で2010年の販売が余りにも好調であったため、前年比で落ち込んだもので、実際には例年並の購買数と見る人も居る。
また、2008年上半期までの家屋の値段は、年3・7%程度の値上がりだったが、09年上半期は22・6%、10年上半期は17%、今年の上半期には28・6%と、急激な値上がりが続いた事も影響。
その他に、政府主導の持ち家計画〃ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ〃の進展速度が落ちた事や、昨年末頃から表面化したインフレ高進も、長期ローン利用を伴う持ち家購入に二の足を踏ませた可能性がある。
家屋購入のための特別融資の利用は現在も20%を超える水準で伸びているが、インフレ抑制のために個人融資が引締められ、クレジットカード利用にも金融取引税が課せられるようになった事などで懸念されているのは債務不履行。
7月の債務不履行は昨年同月比で8・55%増えており、12カ月の累積でも4・91%増加との報道は8月3日付エスタード紙サイトなどのものだが、債務不履行の増加は、景気減速などにも繋がる注意信号だ。
8月29日付フォーリャ紙には、銀行が実際以上に債務不履行が起きている事にして、収益の一部を貸倒引当金や貸倒れ損失として申告して税金逃れを試みているとの報道まであるが、単なる返済の遅れから意図的な踏み倒しまで、様々な形の債務不履行が増える可能性は高まっている。
なお、サンパウロ市で売れた新築家屋は2寝室の物件が40・3%で、3寝室が29・5%。所得向上などを見込んだ業者は見入りが良い4寝室の物件も増やしているという。