ニッケイ新聞 2011年9月2日付け
先週末にあったブラジル沖縄県人会創立85周年記念祝典で来伯した本紙の提携紙である沖縄タイムスの金城珠代記者の取材にお付き合い。うちなーぐち教室、三線工房、琉舞、ユタ取材など沖縄コロニアを覗かせてもらった。お陰さまーと言っていいのか3日連続で沖縄ソバを賞味した▼ヴィラ・マリアーナ区にある南麻州レストラン「Sobaria」もその一つ。オーナーはカンポグランデ出身のジェアン・ハダージさん(36)。本人はレバノン系三世なのだが沖縄系二世の女性が母親代わり。出聖後、「古里の味はソバだった」ことから07年に同店を開いた▼オープン当時、試食兼取材に訪れたさい「現象としては面白いが、長くは続くまい」とひそかに思った。沖縄ソバが一般受けするとは思えなかったからだ。しかし4年後の今回、「1カ月以内にピニェイロス区に2号店を開店する」と言うので驚いた。それもソバに特化するという▼「沖縄系のお客さんには『豚骨味が足りない』と言われる」とジェアンさん。それを聞いて「沖縄では豚骨は使いませんよ」と首を傾げる金城記者。基本にこだわって昆布やかつお節をきかせれば高額となるため、鶏ガラ・豚骨スープが当地流。しかし「今まで食べたソバのなかで、麺は本場に一番近い」とか▼お土産用にカバンに入れていた昆布をジェアンさんにプレゼントした金城記者、出汁の取り方を訊かれ、「…母に聞いてメールで教えます」と答えていたのが可笑しかった。カンポグランデ仕込みのソバにこれから本場の血が入るのだろうか。変容が進む食文化の現場が真っ黒のスープにきらめいた。(剛)