ニッケイ新聞 2011年9月3日付け
上原副知事一行は8月27日午前、サンパウロ市イビラプエラ公園内にある開拓先亡者慰霊碑を参拝後、県人会関係者とともにジアデーマ市にある沖縄文化センターを訪れ、町村会の一行も合流した。
会館に足を踏み入れた副知事は、「県人会は44支部あり、約20の市町村会が組織されている。サンパウロ市だけでこのような会館が20あり、土日は3〜4支部で行事がある」という与那嶺会長の説明に、「信じられない」とこぼし、その規模の大きさに驚いた様子を見せた。
一行は会館に隣接する従来の資料館を見学した後、08年の移民百周年で母県から資金援助を受け、会館の奥に建設された「沖縄移民資料館」に案内された。
この日のために力を入れて準備したうりずん会メンバーが一行と面会、館内を説明して回った。
入植当時に暮らした家をそのまま再現したという「移民小屋(casa de caipira)」の説明を担当したのは、松堂忠顕本部第一副会長(76、嘉手納町)だ。
松堂副会長は、57年にボリビアに入植し数年を過ごした後、63年に来伯。70年から現在までスザノ在住。作業員を一人雇い、15日間かけ当時の家をイメージしながら組み立てたという。
「家の中から、横になると月が見えたんです。風流でしょう」と熱心に説明。副知事は関心深そうに見入っていた。
保存されていたコーヒー豆の手動焙煎機、とうもろこしの粒を取る機械、日本から松堂氏が持ち込んだという豆腐を作る石臼など当時の農機具、生活用品なども展示されており、「昔は味噌や豆腐も作っていました」(松堂氏)。
隣のフロアには、沖縄出身の移民史を辿れる年表や写真などが展示されており、テレビ画面も設置され、館内左端の部屋にはコンピューターを完備し、会員家族の名前、家系図が検索できるようなデータベースも作成するという。
さらに中央奥の部屋には、各家庭の仏壇で代々受け継がれる香炉の灰を、細長いプラスチックの容器に保存する棚が設置されており、約3千本の容器が用意されている。今後、希望する家族から集め保管していくという。
沖縄では先祖の位牌を後世へ引き継ぐ文化があり、ブラジルでもそれを行うべきと考えてきた与那嶺会長が発案。
実際に位牌を資料館で管理することは難しいため、代わりに香炉の灰を保管することで、次世代の若者が自分のルーツを知ることができるように、との願いを込める。
一行が館内を回った後は、入口正面の壁に設置された記念プレートの除幕が行われた。
上原副知事、城間会長らとプレート前で記念撮影を行った松本カリーナ沙登美(22、三世)さんは、うりずん会のメンバーで08年度嘉手納町費帰国研修生。資料館整備のために最も力を尽くし、他のメンバーから「一番のはたらちゃー(働き者)」と呼ばれる。
「ブラジルの沖縄出身の移民史や文化はあまり知られていないと思う。これから広めていきたい」と意欲を見せた。
その後、イペーの木の記念植樹が行われ、上原副知事、城間会長、田崎博美嘉手納町長、宮城和男ボリビア沖縄県人会長らの手によって、4本が植えられた。