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高山下議が訪日被災地視察=河村議連幹事長と会談=デカセギ子弟の問題協議も

ニッケイ新聞 2011年9月3日付け

 伯日議員連盟会長の高山ヒデカズ連邦下議(パラナ州、キリスト教社会党)が7月18日〜25日、日本を公式訪問し、「震災発生後5ヵ月の今、日本に住むデカセギの状況は変わらない」と報告した。今回、下院国防外交委員会のファビオ・ソウト議員(バイーア州、民主党)も訪日に同行。現地で会合が開かれ、麻生太郎日伯議員連盟会長(元首相)ら国会議員や企業家、マルコス・ガルボン駐日ブラジル大使、ジョゼ・アントニオ・ピラス在浜松総領事、デカセギコミュニティの代表らが出席した。

 高山氏によると、震災後に帰伯したデカセギ達は新しい職や給与に満足しておらず、未だ無職の場合も多い。そのため、「在日ブラジル人コミュニティの代表に対し、ブラジルも危機的状況にあることは変わりないことを伝え、日本に留まることを勧めた」という。
 日本に住むデカセギに関して高山氏は、「彼らは震災後に連携を取っており、少なくともしばらくは帰伯する意思がないよう。帰ってきたのは、結局は日本に適応できなかった人」と指摘した。
 高山氏によると、現在日本にいるデカセギは約22万人。震災以前からの不況も影響し、既に多くのデカセギが帰伯している。ブラジル人に限らず、中国人やタイ人在日労働者も祖国に引き揚げているという。
 高山氏はまた、津波の被害が大きかった宮城県仙台市、石巻市などを視察。「まだ400年分のごみや瓦礫が残っている」と報告した。
 一方で、「日本の人々には、当地のブラジル人や在日コミュニティからの支援の気持ちが伝わっており、彼らは感激していた」と語る。
 また、デカセギ子弟の教育問題に関し、河村建夫同連盟幹事長(元文科相)とも会談。
 「日本に滞在するためには多額の費用がかかる。今デカセギが最も頭を悩ませているのは、特に子弟の教育費」と高山氏。「子供をブラジル人学校で学ばせるには、平均で月に約500ドルかかり、子供が2人ならその倍。全てのデカセギにその余裕はない。日本政府が外国人子弟に教育を義務付けないせいで、結果として犯罪に走る若者もいる」と危機感をあらわにする。
 そこで河村氏に対し、より安く彼らが教育を受けられるようにするため、使われずに余っている学校の教室をブラジル人への授業用に借りられないかと提案したところ、今回の震災のような非常時用のため、難しいとの回答だったという。
 「実際日本にはこの目的で使えるような教室が余っている。何とか互いに納得できるような代替策を見つけたい」と意気込む。
 さらに、5月に日本の両院で承認された、日伯社会保障協定に関し、麻生氏に調整の努力を感謝したという。
 ブラジル側では既に下院を通過、現在は上院での批准が待たれている。
 「03、04年に違法移民に関する議会調査委員会の一員として訪日したさい、教育者の篠田カルロス氏に相談を持ちかけられてから、この問題に取り組み始めた」と高山氏。麻生氏からは、あとはブラジル側での早期発効を期待するとの発言があったという。
 また、太陽光発電への投資についても、日本の企業家達の強い関心が伺えたという。今回の訪日に関し、「疲れたが、十分収穫があった」とコメントした。