ニッケイ新聞 2011年9月10日付け
躍進するブラジルでの事業拡大に力を入れる——ブラジル三菱東京UFJ銀行(村田俊典(としふみ)頭取)は今年5月に本社から大幅な資本増強を受け、2015年までに並みいる外資系銀行を押しのけて融資総額で上位10番入りする計画を進めている。実現すれば日系銀行としては初めてだ。笠戸丸からわずか11年、1919年7月にリオ支店を開いた横浜正金銀行を前身とする東京銀行が合併されて生れた同行だけあって当地との付き合いは古く、絶妙なタイミングで本腰を入れ始めたといえそうだ。
「これからは1億ドル借りたいという話があっても対応できます」。6月に本社から4億ドル(約6億6600レアル)の増資を受けた村田頭取(50、佐賀)は、そう意気込む。
銀行は自己資本の25%までしか取引先に貸し出せない規制があり、今まで5千万ドル(約8千万レ)だった一社あたりの貸し出し上限が、増資を受けて1億6000万ドル(2億5千万レ)まで高まったからだ。
村田頭取は、「日系企業に限らず、ブラジルの優良企業との取引も増やしていきたい」との方針をあげ、頭取室の小西良一さん(43、大阪)も「近年の日本企業の進出ラッシュに加え、サッカーW杯やリオ五輪に向けて大型インフラ整備を進めるブラジル企業の国内でのレアル資金需要の高まりを受けて増資された」と補足した。
現在はNY社からの融資も含めた在ブラジル企業向け融資総額は30億ドルていどだが、15年までに100億ドルに増やす計画だ。これにより、日系初のブラジル内での外資系銀行の上位10番入りを目指している。
加えて、国立社会経済開発銀行(BNDES)が用意している低利資金を、同行を通して融資する手続きを進めており、来年1月にもサービス可能にすべく申請中だ。
在伯通算14年目、日系銀行界きってのブラジル通である村田頭取は、「14年度末には、HSBCやシティが視野に入るところまで行きたい」との目標を掲げる。外資系での現順位は27位だが、10位内まで行けば2位HSBC、3位シティバンクの後ろ姿が見える。
三菱東京UFJ銀行では、日本の国内経済が伸び悩む中、海外戦略ではアジアを重視してきた。さらに躍進著しい新興国市場に注力することになり、中でも今年からブラジルでの展開を本格化させた。すでにインド、中国の現地法人にも増資済み、特に中国は貸出残高を1兆円程度に引上げるとの計画を立てている。