ニッケイ新聞 2011年9月23日付け
今月だけでドル高が約16%(22日午後5時30分現在1・88レアル)も進んだことで2008年以来のレアル安になり、その影響が工業原料の輸入品高騰などに現れており、様々な方面に関係するのでは一部で心配が生まれていると22日付け伯字紙各紙が報じている。ただし、ギド・マンテーガ財相は21日ニューヨークから「為替安定化の手立ては今のところ考えていない」とあくまで静観の構えだ。
中銀は2011年1月から7月まで、レアル高によるインフレの上昇を抑える為に5回に渡り経済基本金利を上げてきた。しかし、7月〜8月にかけては欧州債務危機や米国債務上限問題、世界景気の減速懸念などが高まり、投資家がリスク回避のために高金利通貨のレアルを売ったため、4・5%の下落を見せていた。
それに加え8月31日、金融政策委員会によって予想外のタイミングで利下げが行われた影響を受け、再びレアルが売られた。
レアル安になると、ブラジル製品が国際市場で安価となり競争力が上がるが一方で、輸入物価上昇によるインフレをもたらす懸念がある。ドル高によって国外にドルで借金を抱える企業の負担は増えている。
このままドル高レアル安が続けば、輸入品の物価が上がる可能性がある。しかし、比較的食料品の自給率が高いとされている国内では、輸入物価上昇の影響よりも、農業産品も含めて輸出産業の増益が期待されている。
「レアルに暴落の危機があるとすれば、それは世界の金融危機がとんでもなく悪化した場合のみだ」と楽観視する姿勢を見せ、「長期にわたってレアル安が続かなければ、輸入品の物価が上がる事はない」とマンテーガ財相はコメントしている。
同日付エスタード紙では、ドル高の影響で既に工業原料の価格が便乗的に引き上げられていると報じている。食品包装や衛生製品、自動車メーカーらが主に輸入するポリエチレンとポリプロピレンなどといった樹脂の価格が10月に13%引き上げられる予定で、鉄鋼も11月には10%再調整される。その他にも小麦といった食料品の再調整もされると予想されている。
インフレ懸念も解消されていないこともあり、基本金利がさらに下がることはないと予測され、世界的に低金利が続く中、10%を上回る高金利通貨のレアルへの売りが長続きすることはないとの見通しだ。
フォーリャ紙では年末に向けて動向を「金融機関の予測では1・65レアル程度になる。もう1・50程度のレアル高に戻る事は難しい。かといって2レアルこともないだろう」と解説している。