ニッケイ新聞 2011年9月27日付け
欧米の景気悪化が深まる中で、国内の多国籍企業による利益送金が拡大している。8月にはブラジル子会社から各企業本社へ約51億ドルもが送られ、BC(中央銀行)がデータ収集を開始した1947年以降の過去最高記録に達していると24日付エスタード紙が報じている。
9月にはドルが急激に上昇、その影響を受けドル換算に損が生じるため送金額が一時低下した。しかし、例年年末には本社への利益送金が増える傾向があるため、今後数週間以内には、再び送金額が増える見通しだ。
利益送金が拡大している主因は、欧州債務危機や米国債務上限問題からなる世界景気の減速懸念だ。2008年の世界金融危機の時と同様、景気悪化の影響を受けている多国籍企業の本社は、比較的に良い利益を出しているブラジルの子会社にドルを送るように指示しているものとみられる。
8月までレアル高が続いていたこともあり、絶好の送金チャンスとなっていた。7月に比べ送金額は180%の増加、前年同期比でも103%増を記録した。
特に欧州の銀行は、ギリシャ債務問題が金融システムに悪影響を及ぼすとの懸念などから苦しんでいる。BCのデータによると、最も8月に多くの利益を送った分野は金融機関で9億5400万ドル、続いて自動車メーカーの8億4500万ドルとなっている。
主な送金先となったのが西ヨーロッパの国々で、約11億9千万ドルがブラジルから送金された。続いて米国、英国、スペインが主な送金先だ。
多国籍企業による利益送金は、BCの予想を超えていたが、「驚くほどではなかった」という。「国内への投資は拡大しているし、ブラジル経済が良好なため利益につながっている。送金額が上がるのは自然なことだ」とBC経済部門のトゥリオ・マシエル氏は述べており、世界危機だけが原因ではないとコメントしている。
また、利益送金が過去最大を記録したことによって、8月の貿易収支は48億6千ドルの赤字を記録した。しかし、同月過去最高となった外国からの直接投資(IED)によってカバーされ、結果的にバランスがとれている。