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刑務所で赤子を産む女囚=母乳期間6ヵ月後に別離=母、娘、孫ともに塀の中

ニッケイ新聞 2011年9月27日付け

 生後6カ月間しか赤ちゃんと一緒にいられない女囚の待遇に関して、エスタード紙25日付けが2頁の特集を組んでいる。サンパウロ市から133キロにあるトレメンベー2はブラジルで初めて、最初から妊娠している女性向けの刑務所として設計・建築されたところだ。
 この4月に開所して以来、すでに10人の赤子がここで生まれた。6カ月間は、サンパウロ州刑務所管局によって最低限の母乳期間として認められている時間だ。同刑務所には526人が収容されているが、半分は薬物関連だ。
 女囚たちの間では、6カ月だけ刑務所の中で育てるか、最初から外で育てるべきなのか、常に議論を呼ぶという。
 妊娠6カ月のジゼーリ・サンターナさん(29)は、「途中で分かれるのは悲しいすぎ。私は生まれたら直ぐにお祖母さんに預ける。赤子が刑務所のことを知らなくて済むように」という意見だ。しかし、パメラ・ラモスさん(25)は「私は絶対に自分で母乳を与える。たった6カ月だとしても、赤ちゃんにとっては重要な時間になるはず」と考えている。
 一方、3歳の娘の訪問を定期的に受ける女囚ロゼアネ・ソウザさんは、「娘はここを『女の家』と呼んでいる。私がここで働いているとおもっているみたい。大きくなったらちゃんと説明するつもり。今はそのままにしておく」という。
 母と娘が同じ薬物売買の罪で同じ刑務所に収監され、そこで赤ちゃんが生まれたケースが紹介されている。
 ラリッサ・デ・カストロさん(20)はトレメンベー刑務所内でジョルジ(仮名)を産んだ。この12月6日に生後6カ月目を迎える事から、「人生最悪の日」と赤子が手から離される日を怯えている。通常であれば、母親など檻の外にいる家族に預けることも可能だろうが、ラリッサの場合はそうはいかない。
 母親クラウジア(41)も同じ罪で同じ刑務所に収監されており、家族自体がバラバラになっている。クラウジアさんは「こんな場所に家族が揃っていること以上に不幸なことはない」という。その通りだ。
 もし、刑務所の外に赤子を預けられる人がいない場合、母親は子供を失う事になる。養子に出さなければならないからだ。6カ月間ずっと過ごした後、分かっていて失うのは辛い現実だ。
 サンパウロ州には1万1749人の女囚が収容されているが、正式な収容能力は6494人分しかない。その大半は薬物関連だ。州政府はこの問題を解決するために8つの女性刑務所の建設計画を立てたが、実施に移されつつあるのは二つのみだ。一つがここで紹介されたトレメンベーで、そのほか、6月にはツピー・パウリスタも竣工された。それ以外はまったく完成の見通しが立っていない。
 ブラジル全体でも状況は同じだ。3万4800人の女囚が収監されているが、正式な定員は1万8700人にすぎない。ただし、全伯の3分の1がサンパウロ州に集中している。関係省庁によれば、今後3年で増築する計画を進めているが、今年だけでも2800人の女囚が増える見通しだという。

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