ニッケイ新聞 2011年9月27日付け
サンパウロ日伯援護協会(援協、菊地義治会長)は、連邦政府が運営する健康保険制度(統一医療保険システム=SUS)を使った治療が受けられる病院をサンパウロ州サン・ミゲル・アルカンジョ市に新設するにあたり、同市の建設予定地で今月23日、定礎式を盛大に開催した。援協の評議員、役員をはじめ、政府関係者や近隣13都市の市長、各地の日系団体から約400人が出席。約1万人の市民も訪れ、来年6月の完成に向け、大きな期待をあらわにした。
同市はサンパウロ市から西方180キロにあり、人口は3万人強。約4年前、入院施設のある唯一の病院だったサンタ・カ—ザ病院が経営難で廃業して以来、医療機関は市が運営する救急診療所のみとなっていた。現在、入院を要する患者はイタぺチニンガ市(30キロ)、ソロカーバ市(80キロ)に搬送されている。
免税が許可される公益社会福祉団体としての認可更新が来年に迫り、SUS病院の経営を決めた援協、医療サービスの整備が急務だった同市と利害が一致し、建設決定に至った格好だ。
市内の中心から近い約1万3400平米の土地を購入、建設面積は約2316平米。最初の3年で内科、外科、小児科、産婦人科のみを受け付ける。当初は40床、3年間で100床まで拡床される見込み。
基本的に一般患者は直接受け付けず、市営救急診療所から回される入院を要する患者のみを受け付けるという。
設計は、病院設計を専門に手がける「FIORENTINI」社に依頼。10月初旬には地質調査などが開始され、建設工事は約1カ月後に開始される予定だという。
同市、サンパウロ州、援協の三者が運営に関わり、最初の3年は市民のみ受け付けるものの、4年目以降は、状況次第で近郊都市とも協定を結び、同市以外の患者を受け付けることも想定されるという。
定礎式には、駆けつけた援協職員40人が進行、準備を行った。アイドル神父として有名なマルセーロ・ロッシ氏を招くとあって、会場には午前9時頃から市民が集まり、その後続々と招待客が到着した。
午前11時半からの開会式で、大きな拍手で迎えられた菊地会長が病院建設を宣言し、毛利連援協副会長が建設計画を説明した。
国家保健審議会(CNS)のマルコ・アントニオ・ゴンサルヴェス氏は、「日本はブラジルより医療が進んでいる。日本人の働きを誇りに思うとともに、大いに期待したい」と挨拶した。
ソロカーバ選出のマリア・ルシア・アマリサンパウロ州議員は、「自分の町出身の子供が産めるようになる。女性にとって最大の喜び」と挨拶し、大きな歓声が上がった。
アントニオ・モッシン市長は、「名誉に思う。経営は困難が予想されるにもかかわらず、病院建設を受け入れてくれた。最高のプレゼント」と言葉を詰まらせた。
その後、ヘリコプターで到着したロッシ神父ら一行がミサを執り行い、菊地会長とモッシン市長の手で設計図が定礎箱に入れられた。
ミサ終了後はロッシ神父がステージに上がってショーを行い、大いに盛り上がった。
菊地会長は本紙の取材に対し、「2〜3年は赤字経営を覚悟しているが、病院運営は援協のためにもブラジル国民のためにもなる。良い医療サービスを提供し、周りの都市にも広げて軌道に乗れば、今後注目されるはず」と展望を語った。