ニッケイ新聞 2011年10月15日付け
順調な国内消費のおかげで2008年の国際金融危機を早々に乗り切ったブラジルで、小売販売の落込みが記録され、中央銀行からも第3四半期の国内総生産(GDP)は実質ゼロ成長との予想が発表されたと12〜14日付伯字紙が報じた。
ギド・マンテガ財相が年頭に発表した今年のGDPの成長率予想は5%だったが、8月の工業生産と小売の落ち込みや、9月の波型ダンボールの販売減少など、経済減速化の兆候がますます顕著となり、GDP成長率が3・5%を割る可能性さえ出てきたようだ。
8月の工業生産が7月比0・2%減少を記録した事は為替相場などの国際的な動きとも関連するが、小売販売が8月に前月比0・4%減少との報告は、国内消費も遂にとの思いを強くさせた。
スーパーなどで売られる日常的な材の消費が前月比0・4%減という数字は過去17カ月で最低で、車や建築資材なども含む広い意味の小売販売の落ち込みは2・3%。8月の建築資材などの販売は2%減少し、7月に前月比1・7%減だったバイクを含む車両販売は4・6%減となった。
小売についての地理統計院(IBGE)の発表は11日の事で、一部の市場関係者はこの時点で今年のGDP成長予想を下方修正し始めており、13日付ヴァロール紙も政府内でも成長予想の見直しを始めた事を示唆する記事を掲載した。
一方、中銀は13日、8月の経済活動指数(IBC—Br)は前月より0・53%低い142・30と発表。第3四半期の経済成長予想を、前回の0・8%から実質ゼロに下方修正した。
9月の経済活動に関する数字はまだ出揃っていないが、経済活動の動向を占うバロメーターとされる高速道路利用車数や波型ダンボールの販売については、8月比で0・3%と4・56%の減少との報告が出ている。
IBC—Brが前月より低くなったのは今年2度目。今年のGDP成長は3・5%との予想は、中銀が8月に経済基本金利(Selic)を引下げた理由の一つで、市場では年末の金利は11%との予想も出ている。
14日付伯字紙によれば、14日からのG20財相・中銀総裁会議出席中のマンテガ財相は、インフレ抑制のための諸政策の結果としての経済減速化は予想されていた事で、第4四半期には再び成長に転じると強気。ブラジルは経済活動レベルを調整する術を知っており、今年のGDPは3・5〜4%、来年は5%成長との線を崩して居ない。
財相にとり、個人融資やクレジットの引き締めと工業製品税(IPI)引き上げなどによる国内消費の落ち込みや、基本金利引下げによる債務不履行減少などの国内動向以上に気になるのは中国の動き。ブラジル最大の貿易相手国でもある中国経済の減速は、新興諸国に深刻な影響を与えるとの懸念の色を隠していない。