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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月19日付け

 その昔、弓削道鏡という凄い坊さんがいたけれども、側室40数人を抱え子女55人の徳川家斉という豪傑もいる。第11代将軍であり、家慶に将軍を譲ったのちも大御所として実権を握ったが、恐らく老中と側近らは、こんなにいっぱいの子どもらの婿入りや嫁ぎ先探しにやっきになったに相違ない。あんなに小さな国ながら怪しの浮世絵は、超が重なる人気だったし、とにもかくにも好き者が多い▼あの初代首相・伊藤博文は、格別の「遊び好き」であり、芸者・梅さんがファーストレデイとして活躍したが、このご令室が頬を濡らしながら博文のご乱行を嘆き、勝海舟の妻・民子さんも、ちょいといい娘さんがいると、つい—手が伸びて8人もの子どもがいるのよ—と慨嘆する。木戸孝允氏のご夫人・松子さんも、元芸者の幾松だし、あの頃の「遊び」はかなり真剣だったような—そんな気もする▼いや、こんな政財界人の遊興は今に続く。鳩山内閣を誕生させた故・三木武吉は、選挙で敵陣から「三木には妾が1人いる」と批判されると、堂々と壇上に上がり「1人ではなく、4人います。私は人情家なので新しいのが見つかっても、古いのを捨てるわけには参りません」と演説し、トップ当選したし、故・鳩山一郎氏にも、愛人との子がいる▼と、こんな話しはいくらでもあるけれども、田中角栄元首相が「越山会」の金庫番・佐藤昭子さんに宛てた熱々な恋文が、文藝春秋に掲載されたそうだ。角さんには、神楽坂の元芸者に2人の息子がいたりの女好き。どんなに激しい文なのか是非にも—拝読致したい。(遯)