ニッケイ新聞 2011年10月21日付け
18、19日に開かれた中央銀行通貨政策委員会(Copom)が、経済基本金利(Selic)を0・5%ポイント引下げ、年11・5%とする事を決めたと20日付伯字紙が報じた。今回の金利引下げは市場でも予想されたもので、来年の基本金利は一桁台にとの見方も出ている。
ジウマ政権発足以来引上げが続いていた経済基本金利が8月に引き下げられた時は、時期尚早、見通しの誤りなどの声も出たが、今回の金利引下げは、アレサンドレ・トンビニ総裁の予告もあり、市場でも平静に受け止められたようだ。
ブラジルの金利は世界一高く、インフレ調整後の実質金利5・5%も、2・3%で2位のハンガリーの倍以上。先進諸国では限りなく0%に近い事もあり、国外投資家をひきつける原因の一つにもなっている。
ところが、インフレ抑制のための切り札とされる基本金利は、企業や一般向けの融資に対する利息や、国債やその他の負債を支払う際の利息計算の基ともされるため、企業や国民のみならず、国にとっても負担増を生む両刃の剣だ。
しかも、高金利による高い利息を恐れて融資を受けるのを避ければ、開発、成長のための投資も含んだ資金繰りを困難にする可能性もある。
ルーラ政権のような高成長下では、基本金利の引上げが生むインフレ抑制効果がもてはやされたが、昨年末から表面化したインフレ高進の動きの中で起きた国際的な経済危機で、中銀も、従来とは異なる調整基準を必要とするに至った。
ブラジルの経済成長は国民所得の向上や消費過熱を生み、08年の経済危機をいち早く抜け出させたが、今年表面化した経済危機の影響は予想以上に大きく、工業生産減退や小売販売減少、企業家の信頼指数低下に続き、希望退職を募る会社も出始めた。中銀の今年の経済成長予想は3・5%で、政府内でも年4%を割るとの見方が出ている。
このような状況下、9月末までの12カ月間で7・31%に達したインフレを目標上限の6・5%に引き下げる事よりも、来年も今年以上の経済成長を維持する事を優先せざるを得なくなっているのが中銀だ。
来年も今年以上の経済成長という方針はジウマ政権上げてのもので、大統領やギド・マンテガ財相とも意見交換後のトンビニ総裁が段階的な金利引下げを匂わせる発言を行ったのは今月6日。
この結果が0・5%ポイントの基本金利引下げで、今月あたりからと予想されているインフレ減速が実現すれば、11月末から来年第1四半期にかけてはこれ以上の幅の引下げもありと予想されている。
基本金利の調整が成長抑制となる事を避けかつインフレを抑制するのは困難との声もあるが、トンビニ総裁は12年末にはインフレ4・5%にとの目標を変えていない。