スポーツ省疑惑=ルーラの口調に大きな変化=現前大統領が個別会談=「共産党は真実を話さない」=14年W杯への影響は?
ニッケイ新聞 2011年10月26日付け
【既報関連】スポーツ省を巡る汚職疑惑の報道が続く中、オルランド・シウヴァ氏を大臣ポストに留めるよう働きかけ、ブラジル共産党(PCdoB、以下、共産党)にも外からの圧力に屈するなと勧めていたルーラ前大統領の口調に変化が生じたと25日付エスタード紙が報じた。
15日付〃ヴェージャ誌〃がスポーツ相絡みの汚職摘発記事を掲載して以来、スポーツ省やシウヴァ氏に絡む疑惑が連日のように伝えられ、シウヴァ氏擁護派だったルーラ前大統領も24日、共産党は真実を語っておらず、同氏の潔白も信じ難いと発言し始めた。
ルーラ前大統領がシウヴァ氏に電話をかけ、メディアなどの圧力に屈せず、忍耐せよと伝えた事は23日付エスタード紙が報じているが、22日付伯字紙は、シウヴァ氏の釈明を聞いたジウマ大統領が「証拠なきものは罰せず」とし、当面の同氏温存を決めたと報道。
その流れを覆すかの前大統領の口調の変化は、24日にマナウスで行われたネグロ川にかかる橋の開通式出席のため、大統領専用機に乗り込んだ現前大統領の個別会談以降明らかにされた。
シウヴァ氏を最初にスポーツ相に任じた前大統領が同氏の潔白と職務遂行を願っていたが、共産党は自分達に都合の良い事だけを報告し、都合の悪い事は皆メディアを通して耳に入ってくるという状況は、前大統領に不信感を募らせた。
しかも、今年辞任した5閣僚中、汚職による4人の場合と違い、所属政党もどっぷりと汚職疑惑の中にいるとされているのが共産党だ。
23日付エスタード紙などは、共産党はスポーツ省やその傘下の団体、機関内の役職や金の流れをコントロールしていたと明記。シウヴァ氏と共に汚職関与の疑いがかかる前任で現労働者党(PT)のアギネル・ケイロス連邦直轄区知事も、元は共産党所属だ。
架空団体や契約不履行の団体に大金が振り込まれ、10〜30%の袖の下を払わないとスポーツ省の監査や返金の対象となる、リオ五輪に向けた強化施設は金だけ払い建設中断など、疑惑報道が続く中での前大統領の口調変化はジウマ大統領の決断にも影響しそうだ。
スポーツ省絡みの疑惑は国際サッカー連盟(FIFA)も注目するところで、シウヴァ氏更迭は時間の問題との21日付伯字紙記事を真に受けたFIFA事務局長が、11月のブラジルでの会議で新任者に会える事を期待と発言。FIFA側がW杯の準備の遅れはシウヴァ氏も一因と見ていた事を知るW杯実行委員会は、同氏温存の報道にブラジルとFIFAとの更なる関係悪化を懸念していた。
25日付各紙サイトによれば、検察庁の要請を受けた最高裁がシウヴァ氏の捜査開始を認め、国庫庁に書類提出を依頼。シウヴァ氏は、前任のアギネル氏共々正式に検察に追われる身となった。