ニッケイ新聞 2011年11月1日付け
野田首相は、TPP(環太平洋経済連携協定)参加と消費税の10%値上げに強い意欲をもっているが、肝心の民主党には強烈な「反対論」ばかり広がり、日本としての取組みがさっぱり進まない。今の社会保障の予算は、借金経営であり、早急に改善しないと「破産」するのは、目に見えている。これには、消費税を増税しないと致し方ない。それでも—「反対」では、筋が通るまい▼TPPは、輸入品の関税撤廃などを決めるアジア太平洋地域の新たな貿易、投資ルールであり、コメや農業だけを対象にしたものではない。これに参加すれば日本の経済的な利益は大きくなるし、経産省と経団連が「参加」を主張するのは、当然なのである。だが、農業団体は「農業が潰れる」と猛反発し、国会議員356人が反対請願に署名もと—おかしな方向へ向かっているのは、何とも情けない▼ただ、今の日本農業が苦境にあるのは、誰しもが承知している。農業従事者の平均年齢は66歳。一戸当たり農地面積は2ヘクタール。そして1ヘクタール未満が全体の55%を占める。しかも、耕作放棄が埼玉県の広さと同じ40万ヘクタールといかにも寂しい。これでは、農水省と農協がいくら頑張っても、お百姓さんは谷底へと落ちてゆく▼そこで政府は、農地面積を今の10倍規模にしたいと一戸当たり20〜30ヘクタールにするなどの抜本的な改革案を掲げている。こうした方策を採りながら農業規模を拡大し農業専門家を育てるの方針であり、これが実現すれば、日本の農業も立派に立ち行くし、TPPを怖がる必要もない。(遯)