ニッケイ新聞 2011年11月5日付け
日本の大手ビール製造会社キリンが、ブラジルビール大手のスキンカリオル社の株を100%買収したことが明らかとなった。4日付で伯字紙が報じた。
キリンは8月に、スキンカリオル社の筆頭株主である、スキンカリオル兄弟から、同社の株の50・45%を39億5千万レアルで買収していた。だが、スキンカリオル兄弟の従兄妹3人が、この株売買の無効を主張して提訴し、少数株主の意向を考慮するように求めていた。
しかし10月初旬に従兄妹側が敗訴。これを受け、キリン側と少数株主の間で交渉が進み、結局キリンが残りの株49・55%を23億5千万レアルで買収することで合意した。
スキンカリオル社は昨年も年商60億レアルを記録したビール大手ではあるが、近年は業界2位の座をペトロポリス社に奪われていた。さらにサルバドールのカーニバルの大口スポンサーをつとめ、北東部での高い知名度を確保していたが、最近になって業界1位のアンベヴ社にその役を奪われていた。
こうした事態から、スキンカリオル兄弟はこれまでにもオランダのハイネケン社やイギリスのSABミラー社とも交渉を行っていたが、このときも従兄妹の横槍が入り、交渉が不成立となっていた。
そこで、買収に乗り出してきたのがビール売上において世界6位のキリンだ。この商談はキリンにとっても、これまではアジアとオセアニアの市場が中心で、ブラジルにおいても地元企業と協同での日本酒や醤油製造がメインだった状況から脱却するチャンスだった。
買収額は総額約63億レアル(約3000億円)と高額になったが、日本の産経新聞によれば、同社の小林弘武常務は「ブラジル市場は成長性が高く、価格は妥当」と語っている。
また、今回の買収により、ブラジルのビール産業の90%が外資系となった。1939年からイタリア移民の一族で運営を続けてきたスキンカリオル社の株譲渡で、ブラジル資本のみの国産ビール大手はペトロポリス社のみとなった。