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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年11月10日付け

 ブラジルに来た当時、ある移住地でライフルを撃った。強盗、夜中に農作物の盗難もある。村の治安部長は「最近使うことないけど練習しておかないとね」と的に缶を置き、打ち方を教えてくれた。のどかな風景のなかで響く銃声に、現実を感じたことを覚えている▼年間3万人が銃で死亡するこの国では、慣れてしまうのだろうか。それが背中合わせでも。先月29日、スザノ・福博村で黒木穣さん(享年60)が強盗に撃たれて亡くなった。未然に防げたのではと残念に思う。というのも両隣が1カ月内に強盗に入られているからだ。3件に共通するのは、塀、番犬、窓枠のなかったこと▼同村では強盗事件が目立ち始めた80年代、村で一斉に銃を集団購入、全家が所有する。冒頭の移住地でも聞いたことだが「銃の使用は威嚇のため。家に入られたら抵抗するな」と聞いた。今回は撃ち合いの結果だった。「勝ち気な性格が災いしたのか」との声に諦観も漂う▼上野ジョルジ村人会長は「未成年だと釈放されるし、保釈金で簡単に出てしまう。警察もどうしようもない」と法改正の必要性を訴える。しかし現実的とは思えない。以前は強盗が多かったモジ市のピンドラーマでは駐在所を設置、軍警が詰めるようになった。10年は4件だった強盗が今年は0件との実績を上げている。銃同様〃威嚇〃が効果的なのだろう▼「結論、いかに自衛するか」—。村の重鎮の達観した意見をよそに離れる人も多い。知人の家族も居を移し、長年住んだ村は仕事の場でしかない。コロニアの土台の過疎化を進めているこの問題を、日系社会全体で考えていけないものだろうか。(剛)