ニッケイ新聞 2011年11月19日付け
40数日もの長い航海を経てやっとブラジルに着いた頃、強烈なピンガを傾けながらコロニアのマカコヴェーリョが「素人娘には手を出すな」とぽつり。「どうしてですか」と訊ねると「親が拳銃もってきて結婚しろと迫る」からと訓戒?を垂れたものだが、英語でも「shotgun marriage」があり、婚前の娘さんを妊娠させると—これはもう大騒ぎになるそうだ▼ところが—である。我が大和の国においても、このところ「できちゃった婚」なるものが、大いなる隆盛を誇り、世の大道を闊歩しているのだから拙老などはただただ驚くしかない。しかも—である。年端もゆかぬ少年少女に毛が生えたほどの15〜19歳の若者らに大流行と聞けば、これはもう捨てても置けまい。尤も、あまり響きのいい言葉でもないのでブライダル業界では「おめでた婚」や「授かり婚」と呼称しているらしい▼何しろ第1子を産んだ4人に1人が結婚前に妊娠する「でき婚」で、15〜19歳では8割にも達しているから、これはもう天を仰ぐしかない。沖縄が1番多いのだが、まあ—あそこは熱帯のような暑さだし、あの方の発達がすこぶる早いのかもしれぬ。だが、老骨にとっては、とてものほどに—好ましいとは言えぬ。こんな刹那的な結びつきは、いとも簡単に別れもする▼結婚年齢が低いほど「でき婚」の割合が高いのだが、こうした「婚前妊娠」の若い夫婦の離婚率は、通常の結婚組よりも多い。「でき婚」の婚姻期間が、妊娠の10ヵ月よりも少ないの記録もあるし、始めが不純?だから—暗転となるのも、これまた致し方あるまい?。(遯)