ニッケイ新聞 2011年11月23日付け
パラー州アウタミラ市が、完成すれば世界3位の規模となるベロ・モンテ水力発電所の建設工事の一時中止を要請したと20日付フォーリャ紙が報じた。アマゾンの原生林の中に生まれようとしている巨大ダムと発電所の建設には、今も根強い反対運動が続いている。
アウタミラ市がベロ・モンテ水力発電所の工事中止を要請したのは、具体的な工事開始から4カ月後の事。衛生施設の充実や経済発展など、事前の約束から思い描いていた夢と現実とのギャップが、市長にも約束不履行なら施行許可取消し賛成と言わしめたようだ。
ルーラ政権から続く経済活性化計画(PAC)の目玉の一つで、将来の電力供給確保のために必須とされるベロ・モンテ水力発電所建設は、実際には軍政時代から計画されていたもので、1980年代に立てられた計画では、五つのダムによって水没する土地は1万8千平方キロ。
この計画は、居住地を失う先住民や環境問題の専門家達からの強い反対によって変更され、ダムの規模は当初の計画の35分の1の516平方キロに縮小された。
トランスアマゾニア道とシングー川に囲まれた発電所建設予定地域には11の市があり、その中心が今回工事中止を要請したアウタミラだ。
同市が工事中止を申し入れた理由は、建設工事とその準備段階としての行政とのやり取りを取り仕切るノルテ・エネルジアが、学校や病院の建設や上下水道敷設など、事前に約束された事業の30%しか実現していないという事への不満だ。
基幹構造充実などの事前準備が不十分である事は、20日付エスタード紙の交通事情の悪化と犯罪の増加といった記事と相通じ、月収は大幅に増えたが、家賃や生活費の高騰はそれ以上といった地域住民の不満の声も重なってくる。
工事現場の作業員は地元を優先して採用し、職業訓練も行うなど、人員確保への取組みはなされているが、それでも、町の基幹構造改善への投資が工事推進より遅れている事は確かなようだ。
狭い道にひしめく車やトラック、荷物を抱えた自転車までが規則を無視して走り、人口増は今後も続く事が見込まれるアウタミラ市では、今のまま学校や上下水道整備などが遅れれば、発電所建設で国の補助も出たが教育や保健衛生事情の改善が見られなかったロンドニア州ポルト・ヴェーリョの二の舞になる事を懸念。事前の約束が果たされないなら工事を中止するよう、ジウマ大統領に求めた。
経済成長を旗印とし、〃PACの母〃の異名もとる大統領が、完成の遅れを意味する同市からの工事中止要請に応えるか否かは不明だが、ベロ・モンテの発電量は雨季と乾季で大きな差があり、消費地から離れている事による電力損失も大きい上、根強い建設反対運動が国内外で続いている。