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「落語で日本人の心知って」=落語家桂三枝さんが来伯=USPで「笑い」の講演

ニッケイ新聞 2011年11月25日付け

 「日本人の心知って」—。上方落語協会の会長を務める落語家で、タレントの桂三枝さん(68、大阪)が16日午後、サンパウロ総合大学(USP)日本文化研究所(森幸一所長)のマルチメディア教室で落語について講演し、日本語を学ぶ学生を中心に約40人が集まった。一行はNHKBSプレミアムのドキュメンタリー番組『旅のチカラ』の収録のため10日にサンパウロ市入りし、東洋街、日系人経営のカンピーナスのオレンジ農園などを訪問。今回のUSP訪問も番組の一部として企画された。

 拍手で迎えられた三枝さんは開口一番「皆さんがどれくらい日本語がわかるのかわかりません。わからないことがあれば、うまく説明できませんが言ってください」と言うと笑いが起こり、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
 落語独特の言葉「まくら」「サゲ」などを説明、参加者らは興味深そうに聞き入り、メモを取る姿も見られた。
 また大阪のシャレ言葉の一つ「夏のハマグリ」(身腐って貝腐らん、見くさって買いくさらん=「見ているだけで買わない客」の意)を紹介、「日本語には同じ発音でいくつか意味をもつ言葉があって、関西ではそれを笑いにしている」と説明した。
 落語は弟子の桂三語さんが「動物園」という演目で実演、日当100レアルで雇われ「移動動物園」のトラを演じることになった男の話を繰り広げた。
 「昼食にシュラスコを用意してくれ」「ヴェージャを読ませてくれ」などブラジル文化を織り交ぜた話に、通訳はなかったものの参加者は大笑い、三語さんのしぐさや表情も笑いを誘っていた。
 最後に三枝さんは、「落語には日本語の面白さが詰まっている。落語を通して日本語を勉強し、日本人の心を知ってもらえれば」と講演を締めくくった。
 「面白かった!」「もっと観たかった」という声が多く聞こえた中、最前列に座っていた文学部のペルラ・シルバさん(23)は「扇子だけでいろいろ表現しているのが面白い」、日本語学科のルーカス・マシエルさん(21)は「狂言を観たことがあったが、落語は初めて」と満足げに話した。
 講演後は日本語能力の比較的高い学生10人が残り、三枝さんに日本の笑いに関して質問する時間が設けられた。
 柴垣マルシア佳代さん(23、二世)は「落語で難しいことは何ですか」と質問。三枝さんは「笑いのツボは年代によって違う。たくさんの人に笑ってもらうように演じるのが難しい。歌舞伎などは決まった型があるが、落語にはない。完成形がなく試行錯誤しながら弟子に受け継いでいく」と説明していた。
 講演を終え、三枝さんは「言葉が違うからどうなるかと思ったけど、皆笑ってくれていたようで良かった」と安堵した表情を見せていた。
 一行は16日深夜にブラジルを出発し帰国の途についた。「旅のチカラ〜ブラジル・桂三枝〜」(NHKワールドプレミアム)は今月25日深夜2時(日本時間)に放送予定。(ただし各放送局が配信を収録して、放送日時を変えて放送する場合あり)