ニッケイ新聞 2011年11月26日付け
長年に渡って悪癖を断ち切れなかったが、キリスト教会の助力を経て立ち直った麻薬中毒者たちが、聖歌隊を結成し、20日にはプリンセーザ・イザベル公園で演奏会も開催と19日付エスタード紙が報じた。
サンパウロ市中央部のセーやカサビ市長が掲げる市街化計画〃ノヴァ・ルス〃の区画にほど近い、〃クラコランジア〃と呼ばれる地域は、サンパウロ市における麻薬取引の中心として悪名高き場所だが、ここでは今、麻薬に浸り、夢うつつの状態で出入りしていたかつての重度中毒者たち200人が、聖歌隊〃クリストランジア〃を組んで活動している。
この〃クリストランジア〃は、クラコランジアから500メートル足らずの所にあるサンパウロ市第一バチスタ(バプテスト)教会によって運営され、ブラジル交響楽団指揮者のロベルト・ミンチュク氏の指導のもとで、活動を行っている。
聖歌隊メンバーの中には、青年期から50歳近くまで悪癖が断てなかった人やクラコランジアに10年も出入りしていた人なども在籍するが、皆が麻薬を克服し、今や「イエス様中毒」と語るまでになった。「俺たちがクラコランジアに入り浸っていた頃、市役所は中毒者救済どころか、俺たちを追いたてるようなことばかりやってたよ」と、メンバーの一人は回想している。
バプテスト教会の中毒者救済プログラム・コーディネーターのソラヤ・マシャドさんによると、現在は国内各地からクラコランジアの麻薬中毒者救済のためにやって来た青年ボランティア14人と一緒に活動しており、同教会には元中毒患者という信者が約300人もいるという。教会の牧師によれば、この麻薬中毒者救済に費やした活動資金約100万レアルは、全国に約300万人いるバプテスト教会信者からの献金でまかなわれており、公的援助は受けていないという。
こうした流れは近年比較的国際的な傾向となっている。米国では聖書が犯罪者更正のための一手段として使われ、更正した若者が、従来のゴスペル・コーラスとは違う、ロックやポップスによる新世代のクリスチャン・ミュージックの担い手となることも珍しくない。米国内のクリスチャン・ミュージックの需要はチャート上位を狙えるほど大きく拡大している。ブラジルでも90年代の人気ロックバンド、ライムンドスのシンガー、ロドルフォが麻薬中毒克服後、「聖職者ロック歌手」に転向して話題となった。