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12月1日は世界エイズデー=ブラジルでの実態はいかに=同性愛の青年男子に懸念=感染者や死者最多は南伯

ニッケイ新聞 2011年12月1日付け

 1988年に世界保健機関が定めた世界エイズデー(12月1日)を前に、ブラジルでの新たな感染者は2008年以降減少を続けているが、同性愛の青年男子の新規感染は10年で60%も増えたなどの現状を11月28日付伯字紙が報じた。

 保健省によると、ブラジルのエイズ患者は63万人で、2010年のエイズによる死者は1万1965人。全国的に見ると、15〜24歳の同性愛の青年男子の新規感染が2000年の321人から514人に増えた事や、南伯での患者発生率が10万人当たり28・8人と高い事が際立つ。
 新規感染者数は、2000年の3万440人以降、ずっと3万人台で、2002〜03年と2008〜09年は3万5千人超。08年は3万6523人まで達したが、09年3万5980人、2010年3万4218人と減少傾向にある。
 ただ、15〜24歳の同性愛の男子青年の新規感染が10年間で60・1%増えた事は、13〜19歳女子の新規感染が349人で10万人当たり2・9人、同年齢男子の296人、10万人当たり2・5人を上回った事と共に懸念材料。女装して歩くトラヴェスチ(オカマ)の感染増加も深刻だという。
 青年層の新規感染者増加について、アレッサンドレ・パジーリャ保健相は、エイズ患者やエイズによる死者が急速に増えて国民も危機感を持った時期に比べ、治療法も開発され、死亡率が減った現在は、安心感の故か、予防対策などを怠る傾向が出てきたと分析。
 一方、エイズ患者の支援などを行う社会運動家達は、保健省の啓蒙キャンペーンは流行が騒がれた時期より縮小している事や、同性愛者へは社会的偏見が根強く、検査を受けに行くなどの行為をとり難くさせている事も原因だと考えている。
 一方、人口10万人当たりの新規感染者発生率を地域別に見ると、1位の南伯が28・8人。以下、北伯20・6人、南東伯17・6人、中西伯15・7人、北東伯12・6人となっている。
 南伯は死亡率でも全国平均の10万人当たり6・3人を上回る9人。人口は全伯の15%なのに、新規感染者は全体の23%を占め、人口10万人当たりの新規感染者が99・8人という町まであるといった現状は、注射器を使うタイプの麻薬使用が多い地域である事なども関係するものと見られている。
 保健省では、世界エイズデーにちなみ、30分程度で感染の有無がわかる迅速テスト普及など、具体的な対策を盛り込んだキャンペーンを1日から行うが、識者からは、流行状態が収束してきたのは、非政府組織(NGO)が人の集まるイベントなどでの迅速テスト実施を呼びかけたりしたのが奏功したもので、政府の対応は遅れているとの指摘の声も出ている。