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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年12月1日付け

 「今はブラジルも不景気とかで、盛んに日本へ出稼ぎに行っているそうですが、ブラジル人誰に聞いても、自分の国はいい国だっていいますね。みんな自分の国に誇りを持っています。果たして日本人に同じ質問をしたらどんな答えが返ってくるでしょうね」▼講談社が運営していた「Web現代」で03年に配信された「世相講談」で、先月21日に口頭ガンで亡くなった立川談志さん(享年75)が語った3度目のブラジル訪問の感想だ▼記者会見で「日系社会は伝統芸能が継承されているから落語もすんなり入っていける」と語りながらも、2回の来伯で客のツボを心得ていたのだろう。イリュージョンと呼んだエキセントリックなネタは呼わず、時事ネタなどで満員の文協大講堂を爆笑の渦に巻き込んだ▼「落語とは人間の業の肯定」。これ以上の喝破を知らない。一ファンとして謦咳に接したいと思っていたのだが、ペルー取材で急遽カニエテ移住地への訪問の可能性が生まれ、悩んだ挙句、公演日の帰聖を諦めた▼沖縄開発政務次官の初仕事の場で二日酔い。「仕事と酒とどちらが大事か」と咎めた記者に「酒に決まってんだろ」と返したことが原因で辞任したのが75年。そのわずか前が初来伯。さぞかし勢いのある舞台だったろうしコロニアも目を回したのでは▼本紙は会見でのこんな発言も紹介している。親交があった故手塚治虫の言葉を引き「年寄りの愚痴に聞こえる『最近の若いものは…』、その声に耳を傾けるのが大切」。どういう流れだったか知らない。コロニア記者を激励していたと勝手に解釈すれば、カニエテに行ったのは正解だった。(剛)