ニッケイ新聞 2011年12月17日付け
勝ち負け抗争の焦点の一つ、脇山事件(1946年6月)の真相を実行者本人が詳細に語っていることで話題を呼ぶ証言映画『闇の一日』(イマージェンス・ド・ジャポン=IMJ、奥原ジュン監督)の再上映会が14日午後、文協大講堂で行われ、約350人が固唾を呑んで画面を見つめた。
百年祭のサンパウロ市式典会場で胸を張って行進する自衛隊員に、皇太子殿下が手を振られる明るいシーンから映画は始まり、「今ではこんなに歓迎される日系だが、かつては大変な困難に直面した時代があった」と暗転し、画面は戦争中へ飛ぶ。
『百年の水流』の著者で、同抗争を詳しく取材した外山脩さん、ベストセラー『コラソンイス・スージョス』の著者フェルナンド・モライスさんらの映像を交えながらも、実行者・日高徳一さんの心迫の証言を軸に話は進行する。
1時間半の上映後、戦後移民の黒須悦子さん(75、大阪)=サンパウロ市=は「先輩移民から当時のことはいろいろ聞いていて興味があった。この映画を見て、これこそ本当の物語だと思った」としみじみ語った。
福田正吉さん(64、二世)も「父が言っていたことが、今良く分かった気がする」と頷いた。
鐙宮(あぶみや)良文さん(86、北海道)=アメリカーナ市=は、『拝啓 ブラジル大統領閣下』(玉井礼一郎著、たまいらぼ刊、84年)に書いてあったアンシェッタに〃島流し〃された人たちの苦しみを思い出したと前置きし、「日本移民がこんな目に遭ったという歴史を二世、三世にポ語で伝えられるこの映画は、とても重要だ」とのべた。
奥原代表によれば、この映画は完成したばかり。11月21日に初上映されたが、文協が用意した機材が途中で故障して半分しか上映できず、今回の再上映となった。「さらに取材を重ねて内容を充実させ、地方巡回上映なども検討している」と意欲的に語った。