17日夜(日本時間18日朝)の「ヒバクシャからの手紙」という番組で「サバイバーズ・ギルト」という言葉を耳にした。戦争や災害、事故、事件などで奇跡的に生き延びた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かった事で感じる罪悪感の事だ▼それを聞き、13日に急逝したエドゥアルド・カンポス氏のセスナ機に同乗していた可能性があった同氏の妻のレナタ氏や副候補のマリーナ・シウヴァ氏も、同様の思いを持っていなければ良いがと考えた。サンパウロ州知事選での連立問題でサントスでの選挙キャンペーン参加を避けたが、カンポス氏の死去で大統領候補昇格が濃厚なマリーナ氏と、子供達の事が気がかりでレシフェに戻り、マリーナ氏の励まし役に回ったレナタ氏▼被爆者の高齢化を見、自分も語り部になって原爆の悲惨さを伝えたいと願う20代女性は、「偶然で助かった」と書いた原稿を、被爆者に「紙一重の差で助かった」と直されたという話もある。別の番組では「いつでも夢を」という曲を作った吉田正氏はシベリア抑留中に亡くなった人達の故か、抑留中の事をほとんど語らなかったという話も流れた。生き残ったがために69年間苦しみ続ける人がいる事実は重い▼幼少時の病気のために寝たきりとなった女性が「生きている限り使命がある」と語っていた事も思い出す。身近な人を亡くした後に「自分が代わりに死ねば良かった」という人と、「その人の分まで生きよう」とする人がいる▼カンポス氏亡き後、マリーナ氏が同氏の遺志をついで大統領候補となれば、カンポス氏の遺族達が味わうはずの葬儀後の虚無感が少しは薄れるのではとさえ思わされた午後だった。(み)